2025.09.22
言葉は届いているのに、誰も動かない ― カリスマではなく、“共鳴するリーダー”へ ― 共鳴型リーダーシップ4話
齋藤 秀樹
株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事
言葉は届いているのに、誰も動かない 「うちの会社には、ちゃんとしたビジョンがあります。資料にも、社内報にも、ホームページにも明記されている。でも…なぜか、社員が心から動いてくれないんです」 ある経営者の言葉だ。 ビジョンは掲げている。言葉も整っている。だが、「共鳴」が起きていない。 現代の組織では、「理念疲れ」「空虚なスローガン化」が頻発している。 それはなぜか? 理由は明白だ。 “共感のないビジョン”は、誰の心も動かさない。
- 他者の感情を読み取る力
- 自分の感情を適切に言葉にする力
- 共感的に関わる力
を併せ持っている。
さらに、ビジョンを伝える上で不可欠なのが、ストーリーテリングのスキルだ。
単なるスローガンを、「なぜこの言葉にしたのか」「どんな思い出が込められているのか」という“語り”に乗せることで、人の心に深く届く。
【共鳴するビジョンの伝え方】
- 「私がこの言葉に救われた瞬間がある」
- 「これは、うちの誰々が体現していた姿だった」
- 「この言葉を、次世代にちゃんと残したい」
■小さな言葉と表情が、文化をつくる
「表情」「語り口」「問いかけ方」
これらすべてが、リーダーの“共鳴力”をつくる。
ビジョンは“言葉”以上に、“空気”で伝わる。
たとえば、リーダーが何気なく交わす日常会話の中に――
- 「らしさ」がにじんでいるか?
- 「らしくない」と感じた行動に、静かに問いを差し込めるか?
- 部下の小さな実践を見逃さず、ビジョンとの結びつきとして認められるか?
こうした小さなリアクションこそが、文化をつくる。
共感の連鎖は、日々のふとした瞬間から始まる。
■「共鳴型リーダー」が信頼をつなぐ未来組織のモデルとは
カリスマ型リーダーは、「強い言葉」「鮮やかな戦略」で組織を引っ張る。
だが、強さに依存した組織は、リーダーが去ると崩壊する。
一方、“共鳴型リーダー”は、自らが感情を宿したビジョンを周囲に伝播し、信頼のネットワークを育む存在である。
【共鳴型リーダーの特徴】
項目 カリスマ型リーダー 共鳴型リーダー
中心の構造 上下・トップダウン型 信頼ネットワーク型
メッセージ 鮮やか・刺激的 素朴だが本音の語り
支持の動機 憧れ・権威 共感・信頼
組織文化 強い個が牽引 感情の共振で広がる
継承性 リーダー依存型 誰もが語れるビジョン型
未来の組織は、「誰が言ったか」ではなく「どれだけ共鳴が起きるか」で動く。
共鳴は、継続可能性と再現性をもつ組織運営の鍵でもある。
■「共鳴するビジョン」を組織に浸透させる4ステップ
ビジョンを“浸透させよう”とすると、多くの企業は「ポスター化」「研修」「理念ブックの配布」などに走る。
だが本当に浸透するのは、人の語り・感情・日常の行動を通してである。
以下に、ビジョンを「共感を伴って」浸透させる4つのステップを紹介する。
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2009.02.10
2015.01.26
株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事
富士通、SIベンダー等において人事・人材開発部門の担当および人材開発部門責任者、事業会社の経営企画部門、KPMGコンサルティングの人事コンサルタントを経て、人材/組織開発コンサルタント。
