答えは顧客が教えてくれる

2008.04.10

経営・マネジメント

答えは顧客が教えてくれる

竹林 篤実
コミュニケーション研究所 代表

イノベーションは顧客との対話から生まれる。社名のもととなったコピー機の複写技術に始まりGUIやイーサネットを開発したゼロックスが、今もっとも重視している課題、それは顧客と話すことだ。

この話を読んで、思い当たったのがキーエンスである。同社も営業マ
ンだけでなく企画・開発のスタッフがいつも、顧客のラインに入り込
んで話を聞いている。そこで掴んだ顧客さえも気づいていない問題点
を見つけて、製品化するからこそ他社が簡単には追い付くことのでき
ない新製品を次々と生み出すことができるのだ。

ゼロックスとキーエンスに共通するのは、もしかしたらコスト意識で
はないだろうか。ゼロックスのエンジニアといえば相当な高給取りだ
ろう(あくまでも推測だけれど)。キーエンスの営業マンは平均年齢
32歳にして年収1300万と、これまた相当な高給取りである。そうし
たコストのかかる人材に対して普通なら経営者はついつい次のように
考えてしまうのではないだろうか。

すなわち「少しでも生産性を高めて、よい技術をいち早く開発せよ」
とか「暇があれば一社でも多く顧客のところに顔を出して、一件でも
多くの仕事を獲ってこい」とか。もちろんこうした考え方を否定する
わけではない。コストパフォーマンスを常識的に求めるなら、当然と
もいえる考え方ではある。

しかし、当たり前のことをやっていては他社との差別化を図れないの
も事実だ。そこでゼロックスやキーエンスは、顧客から情報を集める
ことに徹底してコストをかけた。優れたエンジニアが顧客の元まで出
向いてじっくりと話を聞けば、あるいはコンサルティングができるぐ
らいに現場をよく知る営業マンが顧客のラインで作業風景をつぶさに
観れば、そこで次のイノベーションのためのヒントを得ることができ
る。

そうやってイノベーティブな技術や製品を生み出すことができれば、
顧客と対話することにかけたコストは十分に回収可能だ。

ポイントは、顧客と話をすることにきちんとコストをかけることだ。
そしてコストをかけていることを、顧客と話をする人間にきちんと理
解させ、かけたコストに見合った価値を回収させることだ。こうした
意識付けをして目的をはっきりさせ、さらにはおそらく顧客との話し
方についても(正確にはSPIN技法などをベースとした質問の仕方と
いうことになるのだろう)トレーニングを受けた上で、顧客と対話す
れば、そこから新たなビジネスのネタを見つけ出せる確率は飛躍的に
高まる。

ゼロックスやキーエンスの事例が教えてくれるのは、こうしてきちん
とコストをかけて顧客と話すことから得られるメリットの大きさだと
思う。

※この原稿に盛り込まれた基本情報の多くは、日経産業新聞2008年
4月9日付1面の記事を参考にしました。

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