イスラエル:欧米植民地の最後のくさび

画像: パレスチナの壁

2023.10.12

開発秘話

イスラエル:欧米植民地の最後のくさび

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/ようするに、欧米は「レヴァント」を支配していたい、というだけのこと。アレキサンダー大王、ローマ帝国、十字軍など、なんども侵略を繰り返しているが、そんな人工国家、橋頭堡植民地が、これまで百年もったためしが無い。/

第一次世界大戦において、英国は、ドイツ・オーストリア・トルコと戦うために、1915年のフサイン・マクマホン協定で、アラブ人にトルコからの独立を承認。1916年のサイクス・ピコ協定で、フランス・ロシアには戦後のトルコ分割を密約。くわえて、17年にはバルフォア宣言で、ロスチャイルド家にパレスチナでのユダヤ人国家建設支援を表明。戦後、国際連盟によって英国のパレスチナ委任統治が認められたものの、三枚舌外交の後始末で、現地で混乱が生じ始める。

しかし、第二次大戦が終わり、ナチスのユダヤ人大虐殺が明らかになると、欧米各国は48年のイスラエル建国を支援。アラブ諸国はこれに反発し、その直後から、73年まで、四度の中東戦争を繰り返し、78年のキャンプデーヴィット合意でいったんは収まったかに見えたが、その後もイスラエルは、国際問題にならないギリギリの線で、ちまちまとパレスチナ人自治区への侵略を続け、もはやパレスチナ人側が海に追い落とされるところまで来て、今回の事件となった。

アラブ人たちにしても、ヨーロッパ各国から先進的な富裕ユダヤ人を多く迎え入れ、むしろトルコやモロッコのような政教分離の近代的国際国家ができることをイスラエルに期待した者もいないではなかった。ところが、実際にやってきたのは、喰い詰めた貧困ユダヤ人ばかり。言語も文化もばらばらで、彼ら同士ですらたがいに意思疎通もできない。このため、イスラエルは、旧約聖書に文字として残っていただけのヘブライ語を強引に口語の共通語として人工的に仕立て直し、宗教教育と軍事訓練を徹底することで、イスラエル人としてのアイデンティティを構築。こうして、できあがったのは、まったく時代錯誤の宗教的ナショナリズムに凝り固まった異様な軍事国家だった。

ようするに、同地の歴史は、同じことの繰り返しだ。アレキサンダー大王のヘレニズム化にしても、ローマ帝国のローマ化にしても、十字軍のキリスト教化にしても、アーガーのフランス化にしても、そして、欧米主導で創られたイスラエルにしても、まったくの人工国家であり、砂漠の中に浮かぶ孤島、典型的な橋頭堡植民地だ。交易拠点としてすら地域に根付いておらず、ただ、母国からの人口流入とその経済の中継拠点としてのみ存立している。そしてまた、ガザやヨルダン川西岸のパレスチナ人地区も、じつは同じようなアラブ側の橋頭堡植民地で、エジプトをはじめとするアラブ側諸国の支援と意地で、かろうじて生かされているにすぎない。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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