詐欺強盗が義賊になる日

2023.02.06

ライフ・ソーシャル

詐欺強盗が義賊になる日

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/正体不明の隠し財産が、詐欺や強盗の結果、日の当たるところに出てきて、しばしば庶民の目に触れるようになると、あれ、これ、おかしかないか、と気づいて、金持ち相手の詐欺や強盗を義賊として拍手喝采して応援しかねない。/

連日、マスコミは詐欺や強盗の話ばかりやっているが、長期傾向としては昔より減ってきているのだそうだ。そりゃそうだろう。いまどき、「ふつう」の家に、カネなど無い。それは、キャッシュレス時代だからというより、そもそも銀行の口座にだって余裕が無い。うちなんかも、子だくさんで、食べざかりで、昨今、やたら教育費もかかるから、ほんとになにも無い。子どもの貯金箱まで、家中からありったけをかき集めても、万を越えられるかどうか。

昔はタクシー強盗、コンビニ強盗なんていうのも聞いたが、これもいまどきムリだろう。とにかく景気が悪い。自腹で、現金で、なんていう方が、むしろめずらしいのではないか。客の方も持ち合わせが無い。会社の伝票か、クレジットの後払いだらけ。路上でオヤジ狩りなんかしたところで、財布はすっからかん。学生をカツアゲしても、近年はろくにバイトも無い、昼飯さえろくに食べれていないから、鼻血さえ搾り取れない。

実際、ニュースを見ても、明日は我が身、などという実感が無い。自分が襲われても、ただ殺され損なだけで、奪われるほどのものが、ほんとうになにも無い。財布の中身は診察券と数千円。スマホもいまだにiphoneの6だし、パソコンはドンキの情熱価格。車も、車検を重ねた小さな軽。身ぐるみ剥がされたところで、上下合わせて1万もしない通販のペラペラスーツ。年来、家族でファミレスや回転寿司にも行っていないし、ひとりでもファストフードやコンビニには寄れない。CMでやっているテーマパークなんか、外国なみに遠い、ほんとうに夢の世界。それでも、やたら税金は取られるし、公共料金は高いし、食品からなにから値上げ、値上げ。ちょっとした贅沢気分が味わえるのは、夕方のスーパーで売れ残りの品に目の前で割引シールが貼られたときくらいか。昨今の勤め人なんて、みんなこれが「ふつう」じゃないのか?

詐欺や強盗の被害に遭われた方は、ほんとうにお気の毒だったとは思うが、その一方、一戸建ての豪邸で、家に金庫や地下室がある、とか、現金数百万、高級時計や宝石金塊を奪われた、とか聞くと、はぇー、すごいなぁ、あるところにはあるんだなぁ、と感心するばかり。成城の駅前や六本木のタワーマンションに住んで、軽井沢にどでかい別荘があって、多くの政治家たちと親しい、なんていう、立派そうな人が逮捕されると、ああ、やっぱり、と思うばかり。まあ、警察に被害を出せる、警察が捜査に入るなんていうのは、まだまともな方の事件だからで、実際は、盗られても警察に言えない隠し財産、明らかでも警察も問えない政治案件なんていう闇の話が、もっといっぱいごろごろあるんじゃないか、と、下衆としては勘ぐりたくなる。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

フォロー フォローして純丘曜彰 教授博士の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。