白熱するアメリカの「お尻洗浄器」市場

画像: ダイナサーチ撮影

日本では「ウォシュレット」は「クリネックス」と同じくらいごく当たり前のものになっている。しかしアメリカでは、「お尻洗浄器=温水洗浄便座」を見ることは家庭でも公共のトイレでもごくまれだ。しかし、コロナ・ショックが引き起こしたトイレットペーパーの買いだめとそれに続く欠品が、アメリカにおける静かなる「ビデ」ブームの引き金となった。商機を掴んでいるのはいったい誰なのか?

コーラーなど従来型の温水洗浄便座のメーカーは、ネット直販ブランドが展開する安価なビデの品質の粗悪さを取り上げては攻撃しますが、これらのブランドの「簡単さ」「手軽さ」がまさしくその人気の秘密だといえます。

従来型メーカーの商品は、なるほど品質には優れているかもしれませんが、高価ですし、素人が自分で簡単に設置できるような代物ではありません。それに引き換え、ネットで展開している新興メーカーの商品は安価で、また、特殊な工具を持たない素人でも10分程度で設置できるという簡単さです。

今日、コロナ・クライシスの只中にあるアメリカの生活者にもてはやされている、安価かつごくシンプルなビデ市場への参入障壁は極めて低いと推察できます。この市場に、大手の小売業者が自社ブランドを投入するのはもはや時間の問題でしょう。

トゥッシーやオーマイゴーなどの新興ブランドは、自社製品の「ファッション性」が従来型ブランドに勝つ究極の武器になると主張します。TOTOのアメリカのホームページを見ると、デザイン性に優れていて、これらのブランドと比較しても決して見劣りはしません。安価な「初心者向け」ビデが米生活者の間に普及するにつれて、よりハイエンドな温水洗浄便座の主流化に向けても道が拓けてくるでしょう。この好機をぜひともものにしてもらいたいものです。

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石塚 しのぶ

ダイナ・サーチ、インク 代表

ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。

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