オフィス労働生産性を向上させるために(7)『働き方改革』の仕上げはICTにて

画像: Coffee Channel

2019.12.26

経営・マネジメント

オフィス労働生産性を向上させるために(7)『働き方改革』の仕上げはICTにて

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

前回の第6弾の記事では、『働き方改革』には3つほどの異なる狙いがあり、自社の課題や取り組み成熟度によって、どれが最も重要視されるべきかが異なることをお伝えした。今回は、『働き方改革』におけるICTの役割と留意すべき点をお伝えしたい。そしてこれらは概ね、『働き方改革』以外の業務改革でもあてはまることである。

例えば、新しい基幹システムの導入で業務プロセスを大幅刷新したのはいいが、その最新の業務プロセスが数年後にも「最新」であり続ける保証はないばかりか、基幹システムによっては少し変更するだけでも随分高額なカスタマイズ費用が掛かり、しかも変更内容次第ではベンダー保証がなくなってしまうことすらある。

逆に、全社に共通する業務に対して、一部の事業部が先行して新しい基幹システムで業務アプリケーションを作ってしまうと、残りの全事業部が業務アプリを更新するときに全社最適の共通標準化ができないかも知れない。こうしたことは特殊な例ではない。

また最近よくあるのは、RPAを導入し、何となく効果が大きそうだからと中途半端なタイミングでRPAの現場主導での適用を解禁してしまったことで、あとで厄介なことになる恐れもあるのだ。

例えば、全社に存在する業務プロセスを共通標準化してリエンジニアリングしようとしたら、多くの部署から「せっかくRPAでロボット化して、その業務の流れに慣れたところだからしばらく変えないでくれ」と言われる可能性すらあるのだ。

つまり、『働き方改革』の際にもICT化は実現の有効な手段ではあるが、「固定化」を促す側面もあるため、そのタイミングや手順はよほど考えないといけないということだ。

基本的な考え方としては、ICT化は業務改革の仕上げに向いている。標準化を進ませる方向に推進力が働き、後戻りもさせないという縛りにもなる。成果進捗具合を定量的に測定することもやりやすくなる。

(次回の記事で手順の問題を採り上げるが)手順的には『大きな改革』部分と『草の根改善』部分を切り分けるというのをしっかりとやって、『大きな改革』を済ませた後に仕上げとしてICT化を進めれば、無駄な後戻りや2重手間をしてしまう恐れは小さくなる。『草の根改善』については現場の工夫で、そしてRPAも利用してコツコツと進めればよい。

それに対し、同じ『働き方改革』でもテレワークの実現(およびそのためのシステム導入とセキュリティの強化)に関しては、上記に挙げたような手順の問題は少ないと考えられる。緊急性の高い(または期待効果の高い)部署を優先してパイロット事業所に指定して試行するなど着実に進めることで、後戻りや二重投資の問題はまず起きないはずだ。

むしろテレワークが有効な企業にとっては、今は大胆に進めることが後押しされる世情なのではないだろうか。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

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