食品ロス削減に向けて──大手コンビニ2社が、期限迫る弁当類を実質値下げへ

2019.06.12

ライフ・ソーシャル

食品ロス削減に向けて──大手コンビニ2社が、期限迫る弁当類を実質値下げへ

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コンビニ大手のセブンイレブンとローソンは今年(2019年)5月、消費期限の迫ったおにぎりや弁当などの実質的な値引きを始めることを明らかにした。 これまでコンビニ業界がこだわってきた定価販売の原則を見直し、期限切れ直前の商品をリーズナブルに提供することで、食品ロスと廃棄コストの削減につなげる狙いだ。 ここ最近、コンビニをめぐっては24時間営業の是非が問われるなど、業界をとりまく環境は世論ともに厳しさを増している。人手不足問題や環境意識の高まりを背景に、社会との向き合い方の転換が迫られるコンビニ業界。その成長を支えてきた強固なビジネスモデルは、いま大きな曲がり角に差しかかっている。 今回は、食品ロス削減に向けた大手コンビニ2社の新たな展開・背景を追いながら、私たち消費者にも求められる「チェンジ」とは何なのか、考えてみたい。

セブンとローソン、値引き分の5%をポイント還元

セブンイレブンは今年秋から、全国の約2万店舖で、消費期限(店頭での販売期限)が4~5時間後に迫った食品類の実質的な値引きを始める。実質値引きとなる対象商品は、おにぎりや弁当、生麺などを中心とした約500品目。セブンイレブンの電子マネー「ナナコ」で購入した客に、定価の5%ほどをポイント還元する形で検討しており、値引きによる還元分についてはすべて本部が負担するという。

対するローソンも、食品ロスを減らすための実質値引きを、愛媛県と沖縄県の約450店で試験的に実施すると発表。深夜・早朝に入荷したシール付きの弁当やおにぎりを、午後4時以降に購入した「ポンタ」「dポイント」会員に対して、100円につき5円分をポイント還元する。還元分は本部が負担するほか、対象商品の売り上げの5%は、ひとり親家庭の子どもを支援するNPO団体などに寄付される。
まずは今年6~8月に両県の店舗で実証実験を行い、客の反応や削減効果を検証。今後、全国の店舗に値引きの還元サービス広げ、2030年までに食品ロスによる廃棄コストを半分に減らすことを目指す。

コンビニオーナーの悩みのタネだった「定価販売」

これまでコンビニ業界では定価販売が原則とされ、消費期限直前の値引きをする「見切り販売」は事実上行われていなかった。つまり、消費期限が近づいた食品のほとんどが、値引きされずに廃棄処分されていたことになる。
コンビニ本部が各店のオーナーと結ぶフランチャイズ契約では、商品の廃棄コストの大半をオーナー側が負担しており、一部のオーナーからは本部の売り上げ確保につながる「廃棄(=定価販売)」を推奨されたとの声も出ていたという。

こうした本部からオーナーへの価格指導に対し、2009年に公正取引委員会が「値引きの制限は独占禁止法違反にあたる」との見解を示したが、その後も各本部はブランドの方針として定価販売を重視。各店のオーナーも本部の意向ということで、廃棄コストを背負いつつ、定価販売を続けざるを得なかったのが実情のようだ。

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高まる世論が変えた、コンビニの強固なビジネスモデル

ここに来て大手2社が見切り販売に踏み切った背景には、コンビニを取り巻く厳しい社会状況や世論があるだろう。今年2月には、大阪府東大阪市のセブンイレブンFC店のオーナーが、人手不足で24時間営業に対応できなくなったとして、深夜の営業を自主的に停止。コンビニの食品ロスをめぐっては、節分シーズン後に大量廃棄される恵方巻きが社会問題化し、農林水産省が業界に対して食品廃棄の削減を呼びかける事態にもなっている。
ネット上では「コンビニは24時間営業じゃなくてもいい」「大量の食品ロスはおかしい」「恵方巻きやクリスマスケーキは予約販売だけにしよう」といった意見も多く見られ、持続可能な社会への関心が高まる中、便利さに慣れきった消費者自身の意識も変わりつつあるようだ。

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