どうも知らない間にトイレが進化して、すごいことになっている。日経新聞に新製品として取り上げられたINAXの「レジオ」。その極端な商品スペックと狙いを少し考えてみたい。
ああ、ここまで書いてきて、少し疲れた。最後、「色」。<艶(つや)を抑えた黒色など、トイレでは珍しい色使いを取り入れてデザイン性も高めた。>だそうだ・・・。確かに「カラーリングはコトラーの製品特性分析から考えれば、差別化のための最終手段だ」とかつて書いた。が、この場合は人を唸らせる「だめ押し」だ・・・。
さて、値段。55万6500円。・・・インドではタタ財閥ががんばって28万円で自動車を作る時代にですよ。一人しか座れない、しかも動かない便器に55万円!
いつも書いていることだけれど、ニーズとは、人が理想とする状態とのギャップであり、その不足状態を解消する対象物がウォンツなのだ。
だけれど、この場合は明確なニーズはない。潜在ニーズですらないように思う。「これならどうだ!」と圧倒的なスペックを提示して、「そういえばこんな機能があればいいねぇ」というニーズを喚起するやり方なのだろう。
もはやトイレの便器などのコモディー化した商品は、当たり前なニーズ対応をしていても差別化はできない。これぐらい極端にやらなければ、何不自由のない生活を送っている人々の購買意欲を引き出すことはできないのだという事例としてはとても面白いと思った。
最後にこの商品のターゲティングとポジショニングを整理してみよう。
ターゲット:生活の中にほんの少しも不自由・不満を持ちたくない人。少しでも改善ポイントを感じたら、解消し、完璧を求める人。
ポジショニング:トイレにおけるあらゆる問題を解決した究極のトイレであり、トイレを安らかなゆとりの空間に変えるソリューション。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。