セクハラの境界線 お笑いをつまらなくした真犯人

2019.01.24

組織・人材

セクハラの境界線 お笑いをつまらなくした真犯人

増沢 隆太
株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

ダウンタウン松本さんの番組での発言がセクハラであるという批判。長崎新聞社長による部下へのセクハラ・パワハラ発言。SPAによる女子大ランキング事件と、ハラスメント問題は絶え間なく続いています。つるし上げに対し、「こんなんじゃ何も言えない」「息がつまる」という声も出る中、ハラスメントへのスタンスを考えます。

3.「笑ってはいけないシリーズ」の視聴率ダウン
18年末のダウンタウン「笑ってはいけないシリーズ」の視聴率がダウンしたと報じられました。その件についてデイリー新潮は「川口春奈だけが面白かった「笑ってはいけない」視聴率低下で“保守的すぎる”の声」という記事を掲載しました。

笑いを作る上で、古典落語にも多く見られる差別や暴力的言動といったものは欠かせない要素の一つです。もちろん古典落語にも爆笑などない、おとぎ話のような無難な噺もありますし、デイリー新潮のいう「保守的な笑い」という、爆笑を求めない人もいることでしょう。しかしそれをすべての国民に強要するのであれば、それは組織に好ましくない言葉を禁じるニュースピークによって思想統制したビッグブラザー*の世界です。(*オーウェル「1984」より)

ではハラスメントを放置して良いのでしょうか?

全く違います。そうではなく、ハラスメントと日常生活、ハラスメントと芸能をごっちゃにしなければ良いのです。

松本さんの言動は芸能という特別な作品の一つ。日常生活の社会そのものではありません。松本さんの発言は番組の演出上のボケであって、日常生活で発せられるものとは区別しなければなりません。「テレビで言ってるから自分も言って(行動して)良い」と考えてしまうような愚かな思考がダメなのであり、そんなレベルの人間であれば、テレビや映画の戦争や殺人シーンですら現実と思ってしまうのではないでしょうか。刑事ドラマも戦争中の時代設定ドラマもすべて禁止しないと犯罪やハラスメント行為が助長されるのでしょうか?そこまで視聴者一般はバカだと言いたいのでしょうか?

番組でおもしろいことを発するのが仕事である芸人さんにおもしろいことを言うなというのは、言論統制以外の何ものでもありません。芸として笑いを発信する本当の芸人さんたちは、日常生活でも常時芸を演じている訳ではありません。

一般人の社会や職場ではなく、テレビなど演芸における内容においては、受け手のリテラシーが問われます。格闘技を試合会場で行うのは正当業務ですが、路上で勝手に戦えば暴行です。バラエティ番組で笑いを提供するのは芸人としての正当な業務です。

バラエティ番組がイジメを助長するという暴論が意味をなさないのは、バラエティは芸であって、イジメは単なる暴行という犯罪だからです。なぜか学校内で起こった犯罪は訴追されないことが結果として多いだけで、犯罪を放置することこそイジメ助長ではないのでしょうか。

リテラシーのない人間のために芸術が弾圧されることは許しがたい暴挙だと思います。

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増沢 隆太

株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。

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