ロジカルシンキングを越えて:9.「海の水を全て沸かす病」の症状と処方箋

2018.09.01

経営・マネジメント

ロジカルシンキングを越えて:9.「海の水を全て沸かす病」の症状と処方箋

伊藤 達夫
THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役

ロジカルシンキングブームが去ってから長いものの、ビジネスプランニングにおけるロジカルシンキングには大いなる誤解や形式に偏った理解がよく見られます。ビジネスプランニングにおけるロジカルシンキングとは何なのか?何でないのか?誤解や偏った理解を含めて概観しつつ本当に使えるやり方を明らかにしていきます。

根本的な勘違いがここにはある。

それは何でしょうか?

それは、「結果として出ている事象、数字に対応することがいいことである」という勘違いです。

結果として出ている事象には、深層というべきものがあります。

数字にならない、数字にまだなっていない、数字にできない部分での原因というものがある。数字になっていない部分があることを認識したうえで、数字になる部分とならない部分を含めた全体の関係性を把握した上で、その体系の中でクリティカルな部分を叩いていかないと、効果の高い施策にはならないということです。

こういった数字にならない部分まで考えていかないといけない。この作業がまさに分析であり、仮説を作っていくという作業なのです。

仮説に関しては、何をすればいいのか?というアクションに関する仮説はみんな出てくるのですが、何が起きていて、それがどう関係して、今の事象として表れてきていると思う?ということに関する仮説はなかなか出てこないものです。

でも、こういった部分での仮説を持って作業をしないと、すべてに手を付ける調査と言いますか、とにかく会社にあるデータをひっくり返して全て見てからいろいろ考えるという、体がもたない作業をやらざるを得なくなるわけです。

たまたまいい結果が出ることもあります。確かにその、たまたま出た結果に救われたこともあります。

でもね、ある時、優秀なコンサルタントに言われました。

「この結果はすごいね。よくわかったね。でも、これ、初めからこうなると思ってだしたの?それともたまたまクロス集計したら出たの?」と。

思わず、「たまたまだよ!」と絶叫している時に気づきました。おそらく、全く違ったアプローチがありえると。自分はとてつもなく非効率的なアプローチをとっている、と。

確かに、20代ならばこの作業に耐えられるかもしれない。最悪35歳ぐらいまでなら、なんとか無理も効くかもしれない。でもね、40代になったら、そんなことはおそらくできない。これは容易に想像がつくことです。

たまたま、早い時間でいい結果が出て、「今回は冴えていた!」という偶然に頼るわけにはいかなくなるのです。「なかなかいい結果が出ないなあ。しょうがない今日は朝まで頑張ろう。みんなごめんね」というようなことができるのは若くて元気な時だけです。

20代のビジネスパーソンがひたすらデータ分析をするのは、それなりに意味があると思います。物事のつながりにおける仮説を考える能力がないのならば、それぐらいやって当たり前だとは思います。

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伊藤 達夫

THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役

THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。

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