ロジカルシンキングを越えて:4.ファクトベース、積み上げをめぐる誤解

2018.06.27

経営・マネジメント

ロジカルシンキングを越えて:4.ファクトベース、積み上げをめぐる誤解

伊藤 達夫
THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役

ロジカルシンキングブームが去ってから長いものの、ビジネスプランニングにおけるロジカルシンキングには大いなる誤解や形式に偏った理解がよく見られます。ビジネスプランニングにおけるロジカルシンキングとは何なのか?何でないのか?誤解や偏った理解を含めて概観しつつ本当に使えるやり方を明らかにしていきます。

そんなことは人間には不可能です。また、そもそも人間の外部環境の認識もそんなふうにはできていません。

実は、「人間は意味合い優位」で物事を見ています。

たとえば、Twitter。ここでは「空目」という現象がよく観測されます。タイムラインを眺めていると、見間違いが多発します。いくつか、印象に残ったつぶやきを拾ってみると・・・

・「待つよ」を「侍つよ!」に空目。

・「動け!」を「働け!」に空目した・・・。

・「ボカロクラスタ」を「ボロカスクラスタ」に空目してしまった。

・「ブブゼラ」を「ブルセラ」に空目した。死にたい・・・。

・「ソムリエ」を「ソニエリ(ソニーエリクソン)」に空目した。あるある。

本当ですか?と思うような空目がやまほどありますが、こういうふうに人は空目をしてしまう。そもそも、人は事実を見ているというよりは、既に過去に見たものがかぶさって見えているのです。こういう、過去に得た知識を伴って知覚することを「認知」と言います認知心理学では基本的な考え方です。

未来にゴールを設定し、意思を持てば、それに伴った意味合いで事実が見えてきます。未来と過去があって、その上で事実認識をしているのに、人は事実を認識しているつもりになっている。

「傘を持っていく、レインコートを着ていく」が解としてイメージされていれば、雲や湿った風などの「雨が降りそうな事実」が際立って見えてくるわけです。そうでなければ、事実の選択などできません。積み上げているように見えても、必ずどこかから引っ張っているのです。

しかし、困ったことに上場企業は合理的な意思決定が求められます。「事実に基づいた客観的な意思決定をしないと、株主に対しての説明責任が果たせない」といったことに悩む経営者がいました。彼の口癖は「客観的なデータに基づく選択肢を持ってこい」でした。

事実に基づいて客観的な意思決定をするなどということは、そもそも不可能であり、できたとして費用対効果は非常に低そうなことはわかりそうなものですが、人は時にそういう幻想に囚われるのです。

この幻想を利用して業務改革を売りまくったコンサルタントもいます。「ベストプラクティスで属人性が排除されます!」などのメッセージがよく使われたと記憶しています。システムコンサルタントが基幹業務システムを売る時の常套句でした。

でも、よくよく考えてみればそんなことは起こりえません。自社の競争優位の源泉を考えてみたときに、それがどこにあるのかにもよりますが、みんなが導入していいものは、横並びになるだけです。みんなが何かしら同じものを導入したら、保有リソースが大きい会社が勝つだけです。

リソースの保有量が他社を圧倒するようなナンバーワン企業はそれでいいかもしれませんが、そうでない企業は、そうならないために違うアクションを実行するのです。これは戦略概念の基本中の基本です。

むしろ、あらゆる事実を検討してはならないのです。自社の固有の未来、固有の過去から見えてくる固有の事実が自社の差別化の源泉なのですから。

では、そのような固有の未来をどう発想するのか?が問題となってきます。そう、それは最近流行している「仮説」と「論点」のお話です。

次回は仮説と論点をめぐる誤解について書いていこうと思います。

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伊藤 達夫

THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役

THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。

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