ロジカルシンキングを越えて:2.米国で育まれたロジックの形式

画像: ぱくたそ

2018.03.16

経営・マネジメント

ロジカルシンキングを越えて:2.米国で育まれたロジックの形式

伊藤 達夫
THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役

ロジカルシンキングブームが去ってから長いものの、ビジネスプランニングにおけるロジカルシンキングには大いなる誤解や形式に偏った理解がよく見られます。ビジネスプランニングにおけるロジカルシンキングとは何なのか?何でないのか?誤解や偏った理解を含めて概観しつつ本当に使えるやり方を明らかにしていきます。

前回は、コンサルティング出身者はビジネスプランニングにおけるロジカルシンキングの役割などが分かっていないといったところを書きました。今日は日本でのコンサルティングにおけるロジカルシンキングの系譜を見てみようと思います。

そもそも、コンサルティングの報告書のスタイルが日本に入ってきたのはいつなのでしょう?

それは大体1980年代~90年代のことでした。

いわゆる、コンサルティングのプロジェクトが大企業で盛んに行われ、ピラミッドストラクチャー的なスタイルでブルーブックと呼ばれる報告書が大量に作られました。

外部の第三者であるコンサルタントが、自分たちの独自の分析に基づいた「アイデア」を伝えるための表現形式として、ピラミッドストラクチャーは非常に強力でした。大きなインパクトをもって日本企業に受け入れられたと思います。

しかし、1980年代までは、日本人は「米国人がかっちりと論理的な言葉で語ること」をバカにしている感があったと思います。日本企業の中では、「ツーと言えばカー」「阿吽の呼吸」「以心伝心」「みなまで言うな」的なコミュニケーションが成立している面もありました。

言葉にしなくても細部まで目が届くようなコミュニケーションに誇りをもっていたと思います。それは、ある意味で「一億総中流的」なバックグラウンドを人々が共有し、「終身雇用」という共同幻想の中で、きっちりと言葉にしないでも伝わるといった状況だったと思います。

しかし、米国は多民族国家です。移民の国ですし、国土は広く、州ごとに法律まで違います。道を歩いていれば、古くはアフリカから連れてこられた黒人、南部からやってくるヒスパニック、アジアからやってくる中国系、インド系、韓国系などの人々と接触する可能性があります。つまり、彼らは経験の共有が効かない可能性が高い世界に生きています。そのため、企業に集まる人々の出自は多様です。

そうすると、コミュニケーションのためには、厳密に誤解がないような構文が必要となります。その世界の中で育まれた「伝える形式としてのロジック」は相当洗練されていました。当時の日本企業からすれば、しつこいぐらいに誤解のないように伝える形式だったと思います。

しかし、日本の大企業にとっての1980年代は、「ジャパンアズナンバーワン」と言われ、海外資産を購入したり、米国の企業と連携したりと、米国ビジネスパーソンとの接触機会が非常に増えていた時代でもありました。ここで、米国人の目から見て、日本人が奇異に映ったという逸話は枚挙にいとまがありません。

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伊藤 達夫

THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役

THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。

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