「戦略」という言葉の乱発に思う

2008.03.11

経営・マネジメント

「戦略」という言葉の乱発に思う

伊藤 達夫
THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役

以前、打ち合わせをしていた時に、実際にあったことですが「戦略」という言葉を乱発する人がいました。「商品戦略があって、そこから販売戦略があって、広報戦略やプロモーション戦略があるよね。そのつながりの中でのプロモーション戦略の意味合いみたいなものを・・・」正直、聞いているのがつらかったです・・・。

 ランチェスターの法則の一番大きなメッセージは、

「強い者は強い、普通にやれば負けない。弱いものは弱い、普通にやったら勝てない」


ということだと思います。

 確かに、稀に起こる弱い者が勝つケースに関しての知見を教えてくれてはいます。

 局地戦に持ち込むとか、強者とはなるべく戦わないとかそういうものです。それは、普通に戦ったら負けるからですね。弱いものが普通に戦ったら負けるというメッセージがランチェスターの一番根本の知見ですね・・・。

 定義や出自というものを調べて、その本質は何なのか?というものを考えるという学問を系譜学と言います。20世紀最後の哲学者、ニーチェが著書「道徳の系譜」の中で、当時の道徳批判のために編み出したアプローチによる学問ですね。

 ドイツ語で「グード」というのは、「良い」という意味で、「シュレヒト」というのは「悪い」という意味です。

 ただ、キリスト教は「弱きもの、貧しきものは良い、幸いだ」、「強きもの、資金のあるものは悪い、不幸だ」と教えている。

 しかし、ニーチェは古典に遡って調べました。そもそも「グード」という言葉の系譜を辿ると、それは「強い」という意味で、「シュレヒト」というのは、「弱い」という意味だったのです。

 昔は、強いことが良いことで、弱いことが悪いことでした。人はみな、強くなることが良いこと、と考えれば、強くなろうとするのではないか?、それが人類が望むべき道ではないか?、なぜそれが逆転してしまっているのか?

 こういったことを思考していく過程で、系譜学というのは成立したそうです・・・。

 何が言いたいのかというと、自分への戒めでもありますが、インパクトのある言葉、使っているだけで何か意味がありそうな言葉、「戦略」や「マーケティング」などもそうですが、そういった言葉を使う時の「誠意」のようなものって、すごく大事なのでは?というところですね。

 

言葉を正確に使えたらいいなあ、と思うのです・・・。

 

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伊藤 達夫

THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役

THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。

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