本当に金融機関のATMには硬貨の取り扱いが不可欠だろうか

画像: MIKI Yoshihito

2018.05.16

経営・マネジメント

本当に金融機関のATMには硬貨の取り扱いが不可欠だろうか

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

厳しい経営環境を迎えている金融機関のコスト削減の対象の一つがATM。本当に今のような高機能、特に硬貨の取り扱いが必要なのだろうか。メガバンクによる共通化を機に、再考の余地はありそうだ。

しかしこれとて、預金者であれば自らの口座からの「振込」を指示すればよいだけのことだ(つまりキャッシュカードを読み取る必要はある)。その際に残高に不安があれば現金を追加で預けてもよいが、それは何も端数まできっちり同額である必要はなく、お札だけで事足りるはずだ。

預金者でない行きずりの一般生活者には、彼らが預金を持っている金融機関か、コンビニ辺りで振り込んでもらえばいい。何も彼らのために「余分な機能」を維持する必要はない。

では会社やお店といった取引先ならどうか。引き出しに硬貨取り扱いが絶対に必要なケースがどれほどあるのか、これは調べてみないと分からない。確かに、おつりなどで小銭が緊急に必要な店が両替のためにATMに駆け込むケースがゼロではない気がするが(大半の店ではかなり余分に小銭を保管しているというのが現実だろう)、むしろ近所の他の店と「困ったときはお互い様」で両替をし合うほうが、ATMに往復し並ぶ時間が節約できる分だけ現実的な気もする。

また、「振込」の際に硬貨を含む必要があるかについては一般生活者と同じだ。取引先なら確実に預金口座を持っているのだから、そこから振り込むのを基本にすればよく、残高に不安があるなら余分にお札で入金してもらえばよい。

一方、現金の預け入れに関しては異論があろう。売上金の現金を会社や店に置いておきたくないのでATMから預けるというケースがよくある(営業終了が遅い場合は夜間金庫のほうが主流かも知れない)。売上金全額を預けたいとなると端数の金額となって、「硬貨も取り扱ってくれ」となりそうだ。

しかし硬貨を扱わないATM専用のセブン銀行「売上金入金サービス」が(24時間営業ということもあって)人気であることを見ると、多くの会社・店では必ずしも売上金全額を預ける必要がある訳ではなく、多額の現金を会社・店に置いておきたくないだけなのだと考えられる。つまり硬貨を扱わないATMでも十分役に立てるということだ。

結論としては、小銭への両替にATMを利用している取引先が多くなければ、共通仕様のATMから硬貨取り扱いの機能を抜いても大した問題はないのではないか。


【追記】

本文でも触れているが、これはあくまで「頭の体操」である。ATMの思い切ったコスト削減をする余地があるのか(→機能をシンプル化)、あるとしたらどういうものか(→硬貨の取り扱いだろう)、それで利用者は納得するのか、といった一連の問いに答えていくと「可能性は結構ある」ということが言える、というものだ。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

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