サービスの生産性向上を科学する

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2017.01.24

経営・マネジメント

サービスの生産性向上を科学する

松井 拓己
松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト

サービスの本質を捉えればサービスの効率化と価値向上は両立できる

サービスも事業なので、人や時間やお金が限られている中でサービスを磨き上げなければなりません。そこでまずは、「何に取り組むか」「何をやめるのか」を考える前に、「満たすべき事前期待は何か」をハッキリさせることが重要です。事前期待を捉えることができると、その事前期待に応えるために何に取り組むことに価値があるのかが自ずと浮かび上がってきます。それと同時に、その事前期待に合っていない取り組みは、もし無意味行為や迷惑行為になるようであれば、「やめること」も明確にできます。このように、事前期待から外れている「やらなくても良いこと」「やらないほうが良いこと」をやめることで、そこに割いていた努力を、事前期待に応えるための価値ある努力に振り向けることが可能になるのです。

もちろんサービスコンセプトや事業性も考える必要がありますが、このように、事前期待を中心にサービスを組み立て直すことで、サービスの効率化と価値向上を両立は十分可能だと思います。サービス提供者の一方的な思いでサービスを改革しても、お客様、サービススタッフ、事業のいずれかを犠牲にすることが多いものです。お客様の事前期待を捉えて、お客様もサービススタッフも事業としても価値を感じるサービス改革が今求められているのだと思います。

最後にひとつ付け加えさせて頂くとすれば、サービスの価値の見える化や実感化に取り組むことも有効です。日本のサービスは、お客様に喜んでいただきたいという思いで、一生懸命にサービスを仕立てていることが多いものです。その努力の結果が、ちゃんとお客様に価値として伝わっているでしょうか。

「私のためにこんなに一生懸命やってくれているんだ」

「こんなことまでやっているとは、知らなかった」

「さすが、プロは違うなぁ」

例えばこんな風に感じて頂くことができたら、サービスの評価は高まるはずです。せっかくお客様のためにしている努力は、ちょっとした工夫で見えたり実感できるようにすることができます。サービスの生産性向上の取り組みは、事前期待を捉えて何か新しいことに取り組む、または何かをやめてみる、ということだけではありません。今、既に行っている取り組みの価値をお客様が実感できるように見える化することも有効だと思います。

サービスの生産性向上に注目が集まっていますが、サービス提供者の一方的な思いや勇気で、何かに取り組んだり、何かをやめたりすることは得策ではありません。その前に、まずはサービス事業として捉えるべき事前期待とはいったい何だろうかと考えてみることが、サービスの生産性向上には欠かせないのではと思います。

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松井 拓己

松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト

サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。           代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新

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