隠れた人気商品 ── “ノックイン債”の甘い罠

2017.12.04

経営・マネジメント

隠れた人気商品 ── “ノックイン債”の甘い罠

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南青山リーダーズ株式会社

神戸製鋼所のデータ改ざんにみられる不正事件は、多くの取引先を慌てさせましたが、まったく別の理由で泣いている人もいます。それは神戸製鋼所の株価を対象にした「ノックイン債」と呼ばれる商品を買った人々です。 この商品が完売した直後に株価は暴落……。完売早々、ノックイン事由が発生したこの商品も元本割れの危機に陥っています。一見、安全かつ高利回りに思える「ノックイン債」。実は「買ってはいけない」と、あちらこちらのブログ等で警鐘が鳴らされています。 ── 今回の事例をもとに、何が危ないのか、考えてみましょう。

株価25%は、そう下がらない?

「ノックイン債」と呼ばれるこの商品には、「他社株転換条項付 円建債券(期限前償還条項付・デジタル型・ノックイン条項付)対象株式:株式会社神戸製鋼所 普通株式」という難しい正式名称があります。「ノックイン債」はフィンランド地方金融公社が発行している債権で、この公社自体の格付けは、Aa1(Moodyシs)/AA+(S&P)。要するに「1年半の間、神戸製鋼所の株価を判定基準にして利率を決める、比較的安全な債券ですよ」ということになります。

一般的には、「期間中に日経平均株価が25%下がらなければ」という条件がついたうえで、高利回りを約束する「ノックイン債」。「現在の日経平均株価が2万2000円に届くか届かないかの状況下、マイナス25%は1万6500円相当。さすがにそこまでは下がらないだろう……」と見込んで投資する人が多い、隠れた人気商品なのです。

また、8月末に即日完売した今商品の場合、「神戸製鋼所の株価が1年半の間に25%以上下がらなければ」という条件がついていました。
同商品の設定日である2017年8月末の神戸製鋼所の株価は1300円前後でしたから、「その水準からすると1000円を切らないとノックイン事由にはあたらない。そのくらいのリスクはとってもいいのではないか」と、この商品を買われた方は思ったことでしょう。しかし、そこには投資の基本中の基本、二つの落とし穴がありました。

●一点目)上がったものは、いつかは下がる。1年半先のことは誰にも予測できない。
●二点目)株の世界で使い古された言葉。株には「上り坂」「下り坂」、そしてもう一つの「さか」である「まさか」が存在する。

投資家にとって最も好ましくない事態

今回の件を、もう少し詳しく見てみましょう。

期間中、6カ月ごとに訪れる判定日にそれぞれ株価が設定時価格の85%以上の場合、めでたく7%の利益を得ることができます。75%以上の場合は0.5%が適用されます。ただし、設定時価格から株価が一度でも25%を超えて下がった場合、神戸製鋼所の株式で償還されます(終償還日に100%を超えていた場合、当初の投資価格のまま現金で償還)。
この「25%を超えて下がる」が「ノックイン事由」と呼ばれ、投資家にとって最も好ましくない事態なのです。

しかし今年8月末に即日完売したものの、9月末には神戸製鋼所による組織ぐるみのデータ改ざんが発覚。その不正問題から、株価は800円すれすれまで暴落することになります(この記事を書いている11月初旬には、少し戻して1000円くらいで推移しています)。

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