中小・ベンチャー企業を対象とした人事評価制度サービスの提供により、国内28拠点、海外3拠点を展開する、株式会社あしたのチーム代表の高橋恭介氏。世界規模で労使の関係性の見直しが進む現在、人事評価制度のあらたな枠組みが必要になってきていると言う。日本でも「働き方改革」が急ピッチで進む中で、経営者が知っておくべき人事評価制度の本当の意味について、高橋氏にインタビューしてみた。 (聞き手・仙石実・公認会計士、税理士/構成・Tokyo Edit 大住奈保子)
ベンチャー企業に入社し、人事評価制度の重要性を痛感。
その経験が「あしたのチーム」設立につながった
(仙石)まず会社設立のきっかけをお教えいただけますか。
(高橋)20代から銀行系の大きなグループの中ではたらき、その後設立3期目というとてもあたらしいベンチャー企業で仕事をさせていただきました。こうした対照的な2つの企業で仕事をした経験から、人事評価制度の大切さを痛感するに至ったのです。この2つの企業の人事評価制度は、じつはどちらもあまりうまくいっていませんでした。
銀行系のグループ会社では目標管理制度が表面的で、報酬にまったく連動していなかったんです。結局は終身雇用を前提とした年功序列に徹してしまっていました。一方でベンチャー企業ではオーナーがすべてで、ほかには何のものさしもありませんでした。オーナーの目にとまれば入社1年目でも経営側になれるし、そうでなければいくら力があっても報われないという仕組みでした。
はたらいている人からすれば、人事評価制度は一番のよりどころと言っても過言ではありません。こうしたことを、2社での経験から強く感じました。
(仙石)プリモジャパン様では副社長として人事評価制度全般の構築に携わられたとのこと、この頃すでにその重要性を認識されていたということですね。
(高橋)そうですね。会社を設立したのはちょうどリーマン・ショックの10日後だったのですが、プリモジャパンにいたのはその前だったので、好景気のなか仕事ができていたと言えると思います。
有効求人倍率はつねに1を超えていた時代だったので、人事評価制度がしっかりしていないとダメだったんです。社員教育だけでもダメですし、採用だけでもいけません。しっかりとした人事評価制度があるかないかで、会社の業績が劇的に変わっていたんですね。2005年から2008年にかけては、こうした人事評価制度の構築に汗を流しました。
そんな中で、プリモジャパンが上場準備を取りやめるという出来事が起こりました。先の2005年から2008年までは、ゴールドマンサックス証券が70数%の株式を保有する大株主だったのですが、ゴールドマンサックスがIPOエグジットモデルから、バイアウトでのエグジットストラテジーに変換して監査委員会を廃止するという象徴的な出来事が、2008年の4月にあったんです。
この出来事を受けて、私自身も強く考えさせられました。当時私は33歳でした。ここからの30代後半は、不確実性の高い会社に買収された場合においては、会社自体がなくなってしまう可能性もある。その頃の社長が事業部長に、私は課長になるかもしれないというところだったんです。そういうこともあり、自分の置かれた立場というものをなおさら客観的に見ていました。持ち株は0でしたので、本当に単なる雇われ役員でしかないわけです。
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