内定辞退の大波への対応策

2017.05.24

組織・人材

内定辞退の大波への対応策

増沢 隆太
株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

新卒就活は6月1日で大きな節目を迎えます。この日は企業の採用選考解禁日。つまりこれまで水面下で進めてきた採用活動は、晴れて堂々行えることになります。ただし現実にはもう内々定の内定」をもらっている学生もいるようです。いずれにしても来るべき6月1日は採用側にも大きなヤマ場となります。

・空前の売り手市場
空前の採用市場で、売り手つまり学生側優位に進んできているのが現在、「2018卒就 活」と呼ばれる新卒採用状況です。高い知名度を持つ超人気企業でなければ、まだ採用予定数を確保できていないのが普通で、人事の方は心痛な日々を送られているようです。

もちろんすべての学生が行き先を決めている訳ではありませんから、残り少なくなってきた日々でも決まる人は決まるでしょう。引き続き採用そのものには粘り強く注力して下さい。超一流大学でも、ボタンの掛け違え的な些末な理由で内定が無い学生は必ずいます。

問題はこうした中で確保した内定学生です。超売り手市場の中、これから空前の内定辞退が発生する可能性があります。せっかく苦労して得た内定を辞退してしまう学生は毎年います。しかし今年のように採用が楽な環境であれば、辞退へのハードルも下がり、これまで以上に安易な内定辞退があり得ます。


・辞退の原因
内定辞退ですが、そのほとんどはたいした理由でもなく、ほぼ「気分」ともいえるくらいの浅い判断で行われます。そもそも学生の企業研究は、ほとんど就活サイトや学生間情報交換サイトを眺める程度で、その企業自体もそうですが仕事そのものについて緩いイメージ程度しかわかっていません。

私の指導先の大学では財務諸表など、読めもしないデータを眺めるのは無駄だという方針で、本質的な企業研究と自分のマッチングを訴えています。何よりその会社が何をやっているのか、「商社」とか「化学メーカー」のような現実をカバーするにはあまりに大雑把すぎるとらえ方ではなく、最低でもビジネスモデルを理解できなければならないのです。

しかし現実にそこまで企業を調べる学生はほとんどおらず、結局学生同士だったり、職場を離れて何年何十年と経つ母親など、ビジネスの現実を知らない者同士で意見交換が行われて意思決定が進んでいってしまいます。


・企業の対策はある?
現在の売り手市場が続く限り根本的な対策はありません。しかし採用側企業がそれでもできることはあります。上記のようにそもそも学生は仕事のことも会社のことも知りません。知らない中でインターネットの情報洪水に飲まれ、無知同士によるアドバイスも加わり、結局大した理由もなく辞退してしまうことが少なくないのです。

現在のインターネット環境がある限り、間違った情報を遮断することは無理でしょう。しかしそれ以上に適正な情報を送り続ける努力は欠かせません。すでに内定者フォローなどはどこでも取り組み済みと思いますが、単に連絡を取り合う、簡単な研修など課題を課すだけでなく、会社の魅力を伝える機会はいかようにも作れます。

特にお勧めなのは、就活時の会社説明から内定まで進んだ学生へは、より「一体感」を持てるような切り口の情報が有効ということです。具体的には会社の名物社員、メーカーなどでは社歴30年の大ベテラン工員の方とか、職人気質の営業の達人などと話をする機会がお勧めです。

無口な方なら司会者が上手に進行することで、話を聞き出すことができます。つまらないコンサルタントやゲスト講演などより、はるかに興味と関心を掻き立てられますので、ぜひ実施をお勧めします。

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増沢 隆太

株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。

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