日本型調達購買改革の復活

画像: kkphotoさん

2017.05.10

経営・マネジメント

日本型調達購買改革の復活

野町 直弘
調達購買コンサルタント

2000年以降どちらかと言えば欧米型の集中化、競争化、集約化と言った調達購買手法が主流だった日本企業の調達購買改革ですが、ここ数年違った流れが出てきています。 それはサプライヤマネジメントとユーザーマネジメントという日本型調達購買改革の手法です。

3.長期的な取引を維持している部品、サプライヤも多いが、一方で数年程度の短期間の取引をするサプライヤが増えている。

このレポートはあくまでも日本国内での取引に限定して分析をしていますがグローバル化により、一層の新規サプライヤや系列外サプライヤとの取引を増やすことにつながっていることでしょう。このように系列取引が重視されてきた自動車業界でもオープン化やサプライヤの見直しが行われている状況が理解できます。

上記のレポートの様に当初は欧米型集中購買、競争化、新規サプライヤ開拓からスタートした調達購買改革ですが、昨今はそれに加えて新しいサプライヤや系列外サプライヤ、グローバルでの現地サプライヤなどとの新しい関係性づくりが求められ始めているのでしょう。そういう点からもサプライヤマネジメントがより重視されています。またこの流れは「日本型調達購買改革への回帰」と言えるでしょう。

また一方で、ユーザーマネジメントの強化という流れも出てきています。開発購買はユーザーマネジメントの一手法ですが、欧米で開発購買というコンセプトはあまり聞きません。

欧米は職業の専門化が日本よりも進んでいる為、エンジニアが仕様を決め、それを安く買うのが調達購買の仕事である、という理解がベースにあるからです。しかしここ数年の日本企業の流れとしては「価格は仕様が決まった段階で80%は決まる」ということから「如何に安価に仕様決定(開発)させるか」が重視され始めています。そして上流への関与や開発への提案機能がより重視されてきました。

このような開発購買の活動は特に自動車メーカーのデザインインとか、コンカレントエンジニアリングと言った活動に代表されるように日本企業の得意分野と言えます。しかしこのような開発購買、ユーザーマネジメント活動は特定の企業や業種では上手く機能しているものの、多くの企業では十数年来の課題として残されているのが現実です。また最近では上流関与を部品や原材料以外の間接材やサービスで志向する企業も増えています。

つまり開発部門だけでなく要求元(施策元、ユーザー)までその対象を広げ支出の最適化に寄与するというユーザーマネジメントという活動の推進が求められているのです。このような開発購買、ユーザーマネジメントの活動も「日本型調達購買改革手法」と言えるでしょう。

このように最近は「欧米型手法」に加えて「日本型調達購買改革手法への回帰」が重要なポイントになってきているのです。ここでの重要なポイントは「カテゴリマネジメント」「サプライヤマネジメント」「ユーザーマネジメント」の3つのマネジメントをいかにバランスさせていくか、ということです。

昨今の流れとして従来の自動車、電機などの量産系ものづくりだけでなく半量産系や受注生産系などの製品事業においても開発購買を如何に進めていくか、という点を多くの企業が課題認識しています。次回は特に今後の課題として事業、製品戦略と調達戦略の同期化について述べましょう。

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野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

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