調達購買改革を巡る誤解 その5

2016.10.19

経営・マネジメント

調達購買改革を巡る誤解 その5

野町 直弘
調達購買コンサルタント

「競争化」というのは誰もが疑わない調達購買の基本ルールと思われています。しかし、一方で「比べられないもの」を「無理に比べる」ことで安物買いの銭失いや結果的にコスト高に陥る危険もはらんでいます。 今回はこの「競争化」=「コスト削減」の誤解について説明します。

このように考えると理由は様々ですが身の回りの案件でも比べられないものが意外と多いことがわかります。もちろんその理由によって、探していない、とか仕様が固まっていない、明確でないなどはやり方によっては競争させることが可能です。

調達購買の仕事は、最適なサプライヤと適正な価格決定なので、もし競争化しなくても最適なサプライヤを選定し、適正な価格であれば問題ありません。ですから新しいサプライヤを探して競争できるようにする以外にも、コスト分析を行って妥当性を検証し適正価格を担保させる等のやり方もあります。いずれにしても様々な場面で柔軟に対応すべきということで
しょう。

先の公共調達の事例などは、競争させるよりも一社指定でプロジェクト全体のコストを如何に抑制し円滑なプロジェクト推進を目指していくべきかが重要であったにも関わらず、無理に比較しようとするから無理がでてきたと言えます。無理に比べることによって最悪の場合には安かろう悪かろうという状態に陥ります。

またこれはオークションなどでよくある事例ですが、4社候補がいたとしても1社が圧倒的な競争力を持つような場合に、1社しか入札ができず結果的に高止まりしてしまったということもあり得ます。これも無理に競争させることの弊害の一つです。

仕様が固まっていない、明確でない場合での競争化の場合は、既存サプライヤしか仕様を理解できず、また他サプライヤはどうしても保険をかけて高い見積りを出す傾向となりがちです。こういうケースでは多くの場合、最安値サプライヤは既存サプライヤになってしまいます。しかし最安値と思って選定したものの、仕様変更でどんどんコストが上がり、結局「あのコンペは何だったんだろう」と言うような事態に陥ることも多々見受けられます。
これでは競争化により「見かけ上のコスト削減」だけ実現しましたということになりかねません。

もっと酷いケースだとここに発注したいと想定しているサプライヤがいて、例えば要求元が裏でシナリオを作り最安値見積りなるようにする、もっと言えばそれにバイヤーも協力しているという状況です。それでも(一応)「相見積りとってるからルール通りだし問題ないでしょ」、という言い訳作りにつながります。これを私は精神的癒着状態と表現しています。

ここに上げたようにやはり「競争化」できないものは多くありますし、それを無理に競争化すると、見かけ上のコスト削減だけで実際の「コスト削減」にはつながらない、ということがわかるでしょう。

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野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

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