世界はうまくいくようにできている:三分でわかる陽明学

画像: 中江藤樹記念館陽明園王陽明像

2016.09.26

ライフ・ソーシャル

世界はうまくいくようにできている:三分でわかる陽明学

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/朱子学は、二程子から理気二元論を採ってくることによって、新法新学の一国斉民思想を退け、士大夫の必要性を説いた。しかし、理気二元論は、二程子の弟の程頤によって、体(無心)の中正、「敬」という話に矮小化されてしまっていた。陽明は、朱子の文献の中に二程子の兄の程顥の万物万民一体の「仁」という壮大な構想を再発見し、それこそが朱子晩年の真説と考えた。/


 さらにまた、陽明学は、世界は本来は善なる世界を維持する、という楽観的な天下性善説なので、世界は本来は善になっていくように神が創造した、というキリスト教の摂理説とも相性がよく、万民一体の仁はそのままその博愛の精神と重なり、致良知は、回心し霊として生きる、という話とつながった。同様に、このキリスト教の摂理説を踏襲しているレッセフェール(なすにまかせよ)の社会や経済の自由主義とも、陽明学は相性がよかった。くわえて、朱子学があくまで自分自身を中華とし、外野や庶民の現実を雑音として徹底的に排除することを旨として、近代化のきっかけを逃したのに対し、陽明学は、すべての事象を天理の一端として自分に取り込むことに努めたことによって、時代の変化の波をうまく受け入れることができた。


 ただし、朱子学は、学べばだれでも天下取りの聖人君主になれる、とするのに対し、陽明学は、あくまでもともと天下人である者の、天下人としての心得、つまり帝王学であって、なんの政治的配慮の権限も無い、そこらの庶民が高名な政治家たちの顰みをまねて陽明学なんかやったところで、茶番になるだけ。くわえて、朱子学は八条目の階梯を順を追って修養していけばいいが、陽明学はいきなり、万物万民一体の仁を養う、などという、どう考えても天賦の才なしにはできないような超人的なことを要求する。


 万物万民一体の仁もないくせに、基本の朱子学を侮って最初から陽明学なんかに心酔すると、自分の感情的な独善を天理とかってに誤解し、それに変に確信を持って強引に実現しようとする偏狭なテロリストになってしまう。陽明学は、生まれながらに天下人になるべく中庸中正の感覚を全身に叩き込まれてきた文字通りの本物のエリートのためのもの。そうでないなら、まずきちんと朱子学を学んで中庸中正の感覚を身につけてからにした方がいい。


by Univ.-Prof.Dr. Teruaki Georges Sumioka. 大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門 は哲学、メディア文化論。著書に『悪魔は涙を流さない:カトリックマフィアvsフリーメイソン 洗礼者聖ヨハネの知恵とナポレオンの財宝を組み込んだパーマネントトラヴェラーファンド「英雄」運用報告書』などがある。)

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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