安いものにはワケがある。規制緩和のツケ

2016.01.19

組織・人材

安いものにはワケがある。規制緩和のツケ

増沢 隆太
株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

かつて2008年、「汚染米「ズルしていただき」に、ハムラビ法典を。」というコラムを書きましたが、今度のバス事故で、あらためてその趣旨は9年も前のコラムと変わらず貫くべきだと思いました。それは「ズルしていただき」を絶対認めないことが規制緩和の前提であるということです。

・「自由の責任」
自由は自由である責任を伴います。自己責任論が定着し、自分勝手なふるまいで他人や公的サービスに迷惑をかければ、たちまち大きな批判を呼ぶようになりました。勝手に危険地域や立入り禁止地に出かけ、何千万もの税金で救助を受けたりすれば、ネットという環境下では壊滅的な批判が巻き起こります。

しかし事故や事件で被害者をすべて一方的に自己責任と斬り捨てることはできません。本人の責によらない事故や失敗であれば、税金や公的サービスを使って援助することは社会の責任だといえます。

ハーフの芸能人に侮辱的な発言をした古市憲寿氏が批判されていますが、これは当然出自・出身といった、自分の力ではどうすることもできない事象を侮辱するという、差別そのものだからです。このような不可抗力での被害から守ることは社会の責任です。

話はずれますが、この件、古市氏ご本人にそこまでの自覚はなく、単にウケ狙いのボケが滑っただけではないかと想像します。文化人が挑発的言辞を使うには、プロのお笑い芸人さんのようなセンスを持たなければ無理です。ウケを取る素人の分際でボケをなめるなと思いました。


・規制緩和のツケ
2000年代初頭の規制緩和で、乗合バスなどは大幅な自由化が実現されました。免許制から許可制になり、運賃も価格決定への規制が大きく自由化されたのです。これにより競争当然激しくなりました。特に参入障壁が自由化で下がった訳ですから、今回事故を起こした会社のような中小零細企業も新規参入できるようになったのです。

結果としてバス運賃はどんどんダンピングされ、安い料金でバス旅行を実現できるようになりました。規制緩和バンザイ、めでたしめでたし・・・では当然ないのです。

自由には責任が伴います。安いものにはワケがあるのです。もちろんわれわれ一消費者はその安いワケを見抜けることも見抜けないこともあります。バス事故が起こるたびに事故を起こしたバス会社を吊し上げまではイキオイが出ますが、それ以後は皆すっかり忘れ、価格比較サイトで最安値バスを選ぶ生活は元通りになります。

廃棄のカツを格安で転売、市販するという外国のことのような話が実際に起こりました。安いものには確実に理由があります。


・ズルさせない手段
もし詐欺など犯罪を犯してもその罰が軽かったらどうでしょう。犯罪によって得られる利益より、罰の方が小さければ、犯罪をやったもの勝ちになります。「ズルしていただき(Ceat to Win)」というモラルハザードを許さないためには、一度でも利益のために人命に関わるような犯罪をしたならば、永遠に立ち直れないほどの厳罰が必要だと思います。

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増沢 隆太

株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。

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