忘れられた戦略論 ~ 任天堂のDNA「ブルーオーシャン戦略」の行く末

2015.08.04

経営・マネジメント

忘れられた戦略論 ~ 任天堂のDNA「ブルーオーシャン戦略」の行く末

川崎 隆夫
株式会社デュアルイノベーション 代表取締役

急逝された任天堂の岩田聡社長が主導した核となる戦略は「ブルーオーシャン戦略」であると言われています。しかし、「ブルーオーシャン戦略」は一時ブームとなりましたが、現在ではすっかり下火になっています。その背景を明らかにするとともに、日本企業が今後、任天堂と同じく「ブルーオーシャン戦略」を展開した場合、実効性が上がるものなのかどうか、その可能性を探ります。

「俺の株式会社」は、ブックオフの創業者坂本孝氏が2012年に設立した、外食事業を展開する企業です。2012年に開業した「俺のフレンチ」「俺のイタリアン」をはじめとした「俺の」を冠する料理店の業態は、一流のレストランで腕をふるっていたシェフを招聘し、高級食材を使いながらも「立席」をメインとすることにより客の収容数を高めると同時に、回転を速めることにより低価格での料理提供を実現し、急成長を遂げています。

坂本孝氏は、普段高級レストランなどで食事をする習慣をもたない顧客層の存在に着目し、「高級レストランで提供している食事を、格安料金で提供する。」という事業コンセプトにより、外食市場という典型的なレッドオーシャン市場に参入しながらも、今まで経済的な理由などにより、頻繁に本格的なイタリアンやフレンチを食べる機会を持てなかった顧客層の支持を獲得することができ、ブルーオーシャン市場の創出に成功しています。

併せて、通常のマーケティング戦略も併用し、積極的な広報活動等を通じたブランド形成と、積極的な出店を行うチャネル政策により参入障壁を高めることにも成功しており、現在は他に有力な競合が見当たらない状況となっています。よって、「高級料理を格安価格で提供する外食サービス」は、他に類似サービスが殆ど存在しないため、今後も大きく成長するポテンシャルを秘めています。

「俺の株式会社」の成功事例は、「ブルーオーシャン市場は、日本にはもはや存在しない。」と決めつけることが早計であり、自社の事業領域がレッドオーシャン市場であったとしても、その中のブルーオーシャン領域の開拓に挑戦することにより、眠っている潜在需要を未だ掘り起こせる可能性があることを示したもの、と言えるでしょう。

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川崎 隆夫

川崎 隆夫

株式会社デュアルイノベーション 代表取締役

経営コンサルタントの川崎隆夫です。私は約30年にわたり、上場企業から中小・ベンチャー企業まで、100社を超える企業の広告・マーケティング関連の企画立案、実行支援や、新規事業、経営革新等に関する戦略計画の立案、企業研修プログラムの策定や指導などに携わってきました。その経験を活かし、表面的な説明に留まらず、物事の背景にある真実が浮かび上がってくるような、実のある記事を執筆していきたいと思います。

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