急逝された任天堂の岩田聡社長が主導した核となる戦略は「ブルーオーシャン戦略」であると言われています。しかし、「ブルーオーシャン戦略」は一時ブームとなりましたが、現在ではすっかり下火になっています。その背景を明らかにするとともに、日本企業が今後、任天堂と同じく「ブルーオーシャン戦略」を展開した場合、実効性が上がるものなのかどうか、その可能性を探ります。
また日本における任天堂以外のブルーオーシャン戦略の事例としては、格安理容チェーンの「QBハウス」、個別指導塾の「明光義塾」の例などが挙げられています。
■ブルーオーシャン戦略に関するいくつかの誤解
しかしながらブルーオーシャン戦略は、日本では単なる「ブーム」として捉えられてしまい、現在ではすっかり忘れられた戦略論になりつつあります。それにはいくつかの理由があるようです。その代表的なものは、以下の通りです。
1.ブルーオーシャン市場の開拓を狙って新コンセプトの製品を開発し、市場に投入したとしても、消費者に理解されるのに時間がかかる。また成功するとすぐに競合他社が追随し、市場がレッドオーシャン化するスピードが早いため、先行者メリットを十分に享受することができない。
2.ブルーオーシャン戦略が提示しているツールやフレームを活用して、革新的な製品を開発できるなどありえない。革新的な製品の開発は、そんなに生易しいものではない。
以上のような指摘は、的外れなものではありません。しかし企業戦略は、ひとつの戦略を採用するだけで、全て事足りるわけではありません。それぞれの商品やサービスを取り巻く環境や市場特性に併せて、様々な戦略を複合的に組み合わせながら、企業全体で競争優位性を形成していくことが肝要となります。
よって、「ブルーオーシャン戦略」もひとつの戦略オプションに過ぎず、他の戦略と併用することで、初めて実効性が上がる性質のものなのです。
また、ブルーオーシャン戦略のツールやフレームの活用によって、革新的な新製品などの開発がすぐに出来るようになる、などということは、もちろんありません。
また新商品の開発等の作業は、レッドオーシャン市場における商品開発などの場合と同じく、労力がかかるものであることにも変わりはありませんが、一方でブルーオーシャン戦略のツールやフレームを活用することにより、新たな価値を提供できる新商品や新サービスの開発がより迅速に、かつ効率的に行える可能性は高くなった、ということは間違いなさそうです。
■日本における「ブルーオーシャン市場の開拓」の可能性
ブルーオーシャン戦略は、任天堂など一部の企業を除くと、日本ではこのまま忘れ去られていくのでしょうか? しかしながら、ブルーオーシャン市場の開拓に挑戦し、見事に成功している企業が何社も存在していることも事実です。
その一つとして、典型的なレッドオーシャン市場である外食業界において、ブルーオーシャン市場を開拓して成功した「俺の株式会社」の例をご紹介します。
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2015.07.10
2009.02.10
川崎 隆夫
株式会社デュアルイノベーション 代表取締役
経営コンサルタントの川崎隆夫です。私は約30年にわたり、上場企業から中小・ベンチャー企業まで、100社を超える企業の広告・マーケティング関連の企画立案、実行支援や、新規事業、経営革新等に関する戦略計画の立案、企業研修プログラムの策定や指導などに携わってきました。その経験を活かし、表面的な説明に留まらず、物事の背景にある真実が浮かび上がってくるような、実のある記事を執筆していきたいと思います。