急逝された任天堂の岩田聡社長が主導した核となる戦略は「ブルーオーシャン戦略」であると言われています。しかし、「ブルーオーシャン戦略」は一時ブームとなりましたが、現在ではすっかり下火になっています。その背景を明らかにするとともに、日本企業が今後、任天堂と同じく「ブルーオーシャン戦略」を展開した場合、実効性が上がるものなのかどうか、その可能性を探ります。
その結果、任天堂は2008年に時価総額10兆円を達成し、当時トヨタや東京三菱UFJ銀行に次いで、時価総額3位を記録したほどでした。その後スマホの台頭などにより一時業績が低迷したものの、「常にブルーオーシャン市場を開拓し、そこに新たな価値を提供していく」という任天堂の姿勢が揺らぐことはありませんでした。
その姿勢が4月~6月期における「派生サービス」のヒットに繋がり、業績回復を成し遂げたといえるでしょう。そして今後も、「常にブルーオーシャン市場の開拓に挑戦していく。」という任天堂のDNAは、脈々と継承されていくものと思います。
■ブルーオーシャン戦略とはなにか
任天堂が実践してきたブルーオーシャン戦略とは、そもそもどのような戦略なのでしょうか?
ブルーオーシャン戦略とは、新規需要を主体的に創造し、競争が存在しない状況を創り出すことを図る経営戦略論のことであり、フランスの欧州経営大学院(INSEAD)教授のW・チャン・キムとレネ・モボルニュにより、2004年10月に「ハーバードビジネスレビュー」で発表されました。
その翌年に単行本が出版され、全世界で大ベストセラーになりました。その後ブルーオーシャン戦略は、世界100か国以上の先進企業に採用され、欧米の企業はもちろんのこと、アジアの主要企業でも採用が進んでいます。
単行本では、企業が生き残るために、既存の商品やサービスを改良することで、高コストの激しい「血みどろ」の争いを繰り広げる既存の市場を「レッドオーシャン」、競争者のいない新たな市場で、まだ生まれていない無限に広がる可能性を秘めた未知の市場空間を「ブルーオーシャン」と名づけています。
各社が激しい競争を繰り広げているレッドオーシャン市場で競合に打ち勝つためには、かなりの経営資源を費やすことになりますが、この競争とは無縁の「ブルーオーシャン」という新しい価値市場を創造し、ユーザーに革新的な製品・サービスを提供することにより競争を無力化し、利潤の最大化を実現しようというのが、ブルーオーシャン戦略の基本的な考え方となっています。
ブルーオーシャン戦略の核となるものは、「バリューイノベーション(価値革新)」という考え方です。バリューイノベーションは、市場の境界線を引き直すことにより新たな価値を創造し、「差別化」と「低コスト」の両方を実現しようとする考え方のことです。ブルーオーシャン戦略では、バリューイノベーション実現のためのツールやフレームがいくつか用意されていますが、「アクション・マトリクス」「戦略キャンバス」「6つのパス」などが代表的なツールとなっています。
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2015.07.10
2009.02.10
川崎 隆夫
株式会社デュアルイノベーション 代表取締役
経営コンサルタントの川崎隆夫です。私は約30年にわたり、上場企業から中小・ベンチャー企業まで、100社を超える企業の広告・マーケティング関連の企画立案、実行支援や、新規事業、経営革新等に関する戦略計画の立案、企業研修プログラムの策定や指導などに携わってきました。その経験を活かし、表面的な説明に留まらず、物事の背景にある真実が浮かび上がってくるような、実のある記事を執筆していきたいと思います。