【変革を科学する#6】感動の素

2015.07.24

組織・人材

【変革を科学する#6】感動の素

森川 大作
株式会社インサイト・コンサルティング 取締役

​「感動」は変革を推進して前に突き動かすポジティブな原動力の一つです。「危機感」もその一つですが、ネガティブな力であるという点が違います。ネガティブな原動力は、一点集中型の変革に向いていて、人々を一所に急速に引き付ける効果があります。

一方で、変化に弱い。だから、変革に時間がかかったり、変革の最中に周りの環境が変化したり、ターゲットそのものがブレ始めると、途端に求心力が危ぶまれることになりがちです。

それに対して、ポジティブな原動力は変化に強い。なぜなら、アウトプットだけによって引き付けられているのではなく、プロセスそのものが引き付ける力となっているからです。こういう形を取る変革は、非常に強い。少々の波風は、自律的にどんどん乗り越えて、変革を前に進ませます。いわゆる行け行けドンドン。

そんなポジティブな原動力である「感動」。では、果たしてどうやって感動は生み出せるのでしょうか?とにかく前にある仕事をこなしてがむしゃらにやっていれば、結果として感動<できた>、というのでは変革を科学することにはなりません。感動を変革成功の大切な要素として科学する=設計することがとても大切なのです。では、感動にはどんなメカニズムがあるのでしょうか?

人が感動するためには基本的な2つの条件があります。1つは、自分に関係のあることにしか感動しないということです。他人事、つまり当事者意識がない状態で人が感動するのは難しい。自分事に重ね合わせて初めて人は感動します。その感動から、よし自分もやってみようというエネルギーが沸いてくるものです。ということは、少なくとも”関係者”が”部外者”ではなく、本当に”関係者”であるように、これからやろうとしていることと自分がやることとの結びつきがイメージできるようにすることがポイントです。よくあるシーンに、あるべき姿の全体像を共有して変革意識を高めようとして空転するという検討会があります。これは、簡単に言うと「自分には関係ない」と”関係者”が感じてしまうからです。全体像を示すとしても、必ず参画者が、「これは自分に関係がある」と感じるようにすること、これが感動の第一歩です。

もう1つの条件は、感動が生じるタイミングです。脳科学的な用語になりますが、感動は不快情動が快情動に転換するときに生じるということです。感動というものは、心の動きですが、実際には脳の動きであり、専門的に言うと大脳辺縁系の「情動反応」によるものです。「大脳辺縁系」は、身体内外の環境から入力される知覚刺激に対し、「快情動」と「不快情動」のどちら かを発生させます。簡単に言うと、「快情動」とはそれを好んで選びたいという衝動、「不快情動」とはそれを嫌い避けたいという衝動です。

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森川 大作

株式会社インサイト・コンサルティング 取締役

わたしはこれまで人と組織の変革に関わってきました。 そこにはいつも自ら変わる働きかけがあり、 異なる質への変化があり、 挑戦と躍動感と成長実感があります。 自分の心に湧き上がるもの、 それは助け合うことができたという満足感と、 実は自分が成長できたという幸福感です。 人生は、絶え間なく続く変革プロジェクト。 読者の皆様が、人、組織、そして自分の、 チェンジリーダーとして役立つ情報を発信します。

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