「すべての女性が輝く社会づくり」とドラマ「エイジハラスメント」

画像: Gunnar Ries

2015.07.15

ライフ・ソーシャル

「すべての女性が輝く社会づくり」とドラマ「エイジハラスメント」

日野 照子
フリーランス ライター

ドラマ「エイジハラスメント」に登場する常務のような建前で物事を動かす人にとって、政府が旗振りをする「すべての女性が輝く社会づくり」政策も使い勝手のよい道具になる。

2015年6月26日付けで公表された「女性活躍加速のための重点方針2015(案)」を読んでみても、例えば就業については国家公務員の女性登用加速化や、国・地方・企業の取組の推進と女性の活躍状況に関する「見える化」の推進、有価証券報告書における女性役員情報の集約とその「見える化」の推進などがあり、女性の理工系人材育成、警察や消防、自衛隊などの女性採用拡大なども掲げられている。どんどんやればいいと思う。

けれど、これらの政策が実際に現場に落ちてきたときに、先のドラマの常務のような人々の手によって「通りの良い建前」としてのみ扱われるだろうことは想像に難くない。本当の意味で、「主体性を持って自分が望むキャリア」を選べる人は、やはり幸運な一握りの人だけだろう。結局は、そうやって少しずつしか世の中は変わらない。

もともと「輝く」という言葉に「すべて」はそぐわない。「輝く」という言葉には、「名誉や名声を得て華々しい状態にある」という意味が含まれていて、それは他の大多数の人と異なるということだ。輝かない多くの人がいて、その中で異彩を放つことが「輝く」の正体なのだ。海岸の砂がすべて砂金だったら、金には何の価値もなくなる。「すべての女性が輝く社会づくり」という政策名称は、たどり着くことのない桃源郷を想起させる。

女性活躍加速のための重点方針2015(案)」の冒頭には、『平成24年12月に発足した第2次安倍内閣以降、「すべての女性が輝く社会」の実現を政府の最重要政策の一つとして位置付け、成長戦略の一環として経済界を始め各界各層を広く巻き込んで取組を進めてきた。その結果、国民の間での機運がこれまでになく高まっており、日本社会は明らかに変わり始めている。』とある。果たしてどのくらいの女性が、社会の変化を実感できているだろうか。すべての女性が輝く社会への道は果てしなく遠い。

現実には、政策によってすぐに社会が変わるわけもなく、一人一人が自分の生き方を選べる環境が少しずつ整っていくことで、社会は自ずから変わっていくのだろう。政策という大いなる建前を利用して、生きやすくなる人が少しでも増えてくれたら、それはそれで価値があるのかもしれない。

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いつか時代は変わる。言葉は世界を変え、思いは伝播していく。誰かが誰かを抑圧し、搾取する社会を変えたい。

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