物流が危ない

2015.02.19

経営・マネジメント

物流が危ない

野町 直弘
調達購買コンサルタント

昨年の丁度今頃だったでしょうか。ある企業の役員と話をしていてその方からこう言われました。「野町さん、これから10年位で一番良い商売は物流だよ。トラックと運転手抱えていれば食べるに困ることがないよ」と。

こういう時代に我々は何を考えなければならないでしょうか。

日経ビジネスオンラインで国土交通省の羽尾物流審議官はこうおっしゃっています。
「・・もっと物流起点でビジネスモデルを作らなければいけない時代になったと言えます。他社よりも優位に立つためには、もはや物流は無視できない要素です。」

その通りです。

物流起点のビジネスモデルという点から2つの視点が欠かせません。
一つはコストの視点であり、もう一つは付加価値の視点です。

昨年の2月に私はこう書きました。「供給企業の力を超える無理な安価であれば、いつかは是正する方向に向かいます。つまりいつかはどこかに歪みが生じ、その歪みを解消する力が働くのです。」これは配送料値上げについて述べたことです。

コストの視点とは正にこういうことです。従来であれば物流コストは目に見えないコストとされていました。また圧倒的に荷主企業が強く、荷主企業の言うことを聞かざるを得ないという状況だったのでしょう。しかし、コストはかかっているのです。
コストがかかっている、またいくらかかっている、ことを認識していなければ、コストを下げようという努力にはつながりません。高いコストであることを認識した上で荷主自らが物流コストを下げることに協力しなければならないのです。

先ほどの積載効率のデータを見ても物流コストを効率化によって下げる余地はあります。コストを認識し、妥当な費用を払うことで業界全体の賃金引き上げにもつながり運転手不足の解消にもなるでしょう。インターネット通販などのサービスが拡大している今、送料無料というのは非常に魅力的です。しかしコストはかかっているのです。そのコストを認識した上で妥当なコストは払う、高いコストは協力して引き下げる、という方向に向うべきでしょう。

もう一点の付加価値ですが、これは日経ビジネスでも紙面を割いて取り上げられています。アマゾンもそうですが多くの企業が物流を顧客に対する付加価値として考えています。日経ビジネスの中で今回初めて聞く二つの言葉がありました。
「ダークストア」と「ラストワンマイル」です。「ダークストア」とはネットスーパーの専用拠点で顧客の来店を前提としない消費地に近い倉庫のような配送専用店舗のことを言います。「ラストワンマイル」というのはダークストアのような最終拠点から消費者に届けるまでの最終行程のことです。昨今多くの企業がB2C向けサービスの拡充を図るために、この「ラストワンマイル」のサービス拡充に目を向けているのです。
このように短時間配送、時間指定、小口配送などの消費者向けサービスを大きな付加価値として捉えていることが理解できます。これらのサービスがもっと進化すれば店舗という概念すらなくなるかもしれません。また品揃えや仕入力といった従来の流通での強みよりも物流の力を持っていることが流通を牛耳ることにもつながるでしょう。

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野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

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