高齢化によって生じている本当の問題は何か?

2014.09.09

ライフ・ソーシャル

高齢化によって生じている本当の問題は何か?

川口 雅裕
組織人事研究者 /NPO法人「老いの工学研究所」理事長/一般社団法人「人と組織の活性化研究会」世話人

「老いの工学研究所」のホームページに掲載したコラムを転載しました。

老いをネガティブに捉えている人にとっては意外だろうが、NPO法人「老いの工学研究所による高齢者研究は、高齢期に幸福感が向上していくことを指摘している。

設問「人生を振り返り、各年代の幸福度を100点満点で評価してください」

実は、国内外の諸研究でも同じような結果が出ている。高齢者は健康を損なったり、身体的機能が衰えたりする。あるいは仕事を引退して収入が減ったり、活動範囲が狭まって刺激がなくなったり、家族や友人・知人との別れを経験したりする。普通に考えれば、幸福感は低下するはずなのに、実際には幸福感が向上していく。この現象は、「幸福感のパラドックス」(または「加齢のパラドックス」)と呼ばれている。

●ではなぜ、高齢期に幸福感が向上するのか?

このパラドックスについて、様々な研究者によって試みられた説明には、以下のようなものがある。

1.離脱(世俗から離れることによる幸福)

高齢者は社会活動から離脱し、活動範囲を縮小する。しかしこの為に人との比較から生じる「できない」という否定的感情を持つ機会が自然に減少する。これが、幸福感が維持される理由である。

2.活動(新たな取り組みによる幸福)

高齢者は、それぞれの環境に見合った新しい役割や居場所を見出し、自律的に社会活動を再開している。これが、幸福感を維持する理由である。

3.継続(強みの発揮による幸福)

高齢者は、自身の過去の経験や社会関係を、その後も継続的に活かすような活動を行っており、社会もそれを認め、受け入れる。だから、幸福感を維持できる。

4.最適化(目標に対する態度による幸福)

高齢者は、肉体的精神的衰えに従順になる傾向があり、この為柔軟に目標を変え、また目標の達成に執着しすぎることがない。集中するべき目標を適切に選び、仮にそれが達成できなくても、自己否定することなく、上手に自己を最適な状態に調整できる。現状に対する最適化によって幸福感を維持している。

5.発達(精神的成長による幸福)

高齢者の幸福感は、「仕事や役割に執着せず、引退を受け入れる」「身体的健康に執着せず、衰えを受け入れる」「死に対しても、逃れられないものとしてそれを受け入れる」という精神的に高次の段階に至ることによって得られている。

6.老年的超越(精神的超越による幸福)

高齢者は、まず身体的・社会的に限界が生じることを自然に受容する。さらに、死にする恐怖心ではなく、生と死について新しい認識を持つ。利己主義から利他主義へ移行し、人間関係における深い意味を見出す。このような超越的次元に移行することで、幸福感を維持する。

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川口 雅裕

組織人事研究者 /NPO法人「老いの工学研究所」理事長/一般社団法人「人と組織の活性化研究会」世話人

組織人事関連(組織開発・人材育成・人事マネジメント・働き方改革・健康経営など)や、高齢者・高齢社会をテーマとした講演を行っています。

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