ケータイで服を売る

画像: PhotoAC acworks

2007.12.10

営業・マーケティング

ケータイで服を売る

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

「試着ができないのに、ネットで服が売れるわけがない」 というのが、EC(電子商取引)が始まったばかりのころの 「常識=思い込み」でしたね。 でもよく考えてみれば、ネット以前から、 セシール、ムトウ、千趣会、ニッセンといったカタログ通販でも、 同様に試着ができないアパレルが山ほど売れていた。

カタログ通販で服を購入する場合、

試着→買う

という流れではなく、

買う→試着→気に入ったらキープ、気に入らなかったら返品

のが実質的な消費者の意識であり購買行動だと言えます。

我が家でも、気楽に通販でモノを買い、
気に入らなければ気楽に返品するという女性(妻)の行動を
目の当たりにしていました。
(ご存知かと思いますが、返品は基本着払いでOK)

それでも、カタログやPCならまだしも、
画面の小さいケータイで服が売れるというのは、
いまだに素直に信じるのが難しいですね。

さて、ケータイで服が売れることを実証した、
携帯向け女性専用サイト

「ガールズウォーカー」

を運営するゼイヴェルの今期(08年3月期)は、
携帯通販だけで100億円を突破する見込みだそうです。
(日経MJ、2007/12/10)

同社社長の大浜史太郎氏によれば、
ゼイヴェルの成功の鍵は、

「クロスメディア戦略」

でした。

ガールズウォーカーの立ち上げは2000年4月。
当事業では当初、主に「広告収入」を見込んでいました。

携帯通販は、大手衣料メーカーに相手されなかったため、
中小の在庫処分を扱うしかなかったとのこと。

しかし、神戸コレクション(リアルなファッションショー)
を協賛。また、「CanCam」などの雑誌と連動させた商品販売方法が
奏功して実績を上げたおかげで商品の取り扱いが広がっていった
のです。

特に、2005年から開催しているリアルなファッションショー、

東京ガールズコレクション(TGC)

のインパクトが大きく、携帯通販に服は卸せないと
言ってたメーカーの態度が変わったそうです。

「TGC」は、複数の女性誌のモデルが横並びで登場し、
リアルクローズ(普段着として使えデザインが斬新な
高級感のある服)を世界に発信する場。

そして来場者は、
山田優や押切もえなどの人気モデルが着ている服を見て
欲しいと思ったら、即座に手元のケータイで発注ができます。

このTGCの第2回には、東京コレクションに来たことのない
グッチの総裁が来場したほど。

今年(2007年)3月に開催された第3回TCGには、
延べ2万2千人が来場。うち3千5百人が購入し、
購入単価は平均1万1千円だったそうです。

今後も同社の基軸は「クロスメディア戦略」。
全国の百貨店や雑誌といかに連動するかが重要だと
大浜氏は述べています。

ゼイヴェル自体も初の携帯発女性ブランドを立ち上げ、
全国に22店舗を展開。

これは近年、女性層の集客力が衰えつつある百貨店に
依存しすぎないための戦略なのかもしれません。

ガールズウォーカーは現在、
F1層(20-34歳の女性)を中心に700万人の会員を
抱えています。

ゼイヴェルでは、この巨大な顧客資産をベースに、
情報やトレンドを売るマーケティング会社を目指しています。

不安定なECが売り上げの大半を占める現状から、
若い女性層への有力媒体として収益率の高い広告販売を強化、
ブランドのコンサルティングを主要な事業として育てていく
方針だそうです。ブランド再生事業も開始してます。

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松尾 順

有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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