「リバースオークションの誤解」

2013.04.24

経営・マネジメント

「リバースオークションの誤解」

野町 直弘
調達購買コンサルタント

以前から私がメルマガや筆書等でも触れていますが、今回は「リバースオークションの活用」についての誤解と真実について書きます。

通常見積合わせによる交渉業務は買い手企業のバイヤーを介して1対n社という形で行われます。かなり手間がかかるものです。
一方で「オークション」の場合はどうでしょうか?当然のことながら「仕様調整」「見積条件の調整」等の前捌きの業務は残るものの「見積のやりとり」「見直しのお願い」等の数回にわたる交渉業務は必要なくなります。
これはサプライヤn社間のn対nの競争になるからです。
そうすると従来は手間の問題から2社からしか見積を入手していなかったところにより多くのサプライヤを参加させることが理論上は可能になってきます。つまり競争環境が激化するのです。電子であれ、そうでなかれ、競合企業数を増やしこの競争環境を強めることが「コスト削減」につながっているだけなのです。(そもそも参加企業数が増えているるかどうかも疑問が残ります)

もう一点「オークション=コスト削減」の錯覚につながるような理由を説明します。先ほど「技術、生産、数量、商業的な条件が同じであれば最終的に決まる価格は「落ち着く」ところなのです。」ということを書きました。
この「落ち着く」ところ、というのが重要なポイントです。多くのバイヤーは大体自身でこの部品、原材料、商品がいくら位なのか、所謂「落とし所」を知っています。これは過去の契約条件や複数社からの見積、コスト分析などで、今回のこの案件がだいたいいくら位であればリーズナブルなのか、事前に把握しているということです。ただ、この「落とし所」には罠があります。例えば今まで購入したことがないような「新技術の部品」であった場合、業界内の競争環境や事業環境、技術動向が大幅に動いており過去の実績自体があまり意味を持たないような「動きがある商品やサービス」だった場合には「落とし所」自体が間違っている場合があるのです。
バイヤーは忙しい人ばかりです。多くのバイヤーは数回の交渉を行って自分が当初考えていた「落とし所」近くの価格に決まりそうになった場合にはそこで契約条件を決めてしまいます。一方で「オークション」はその時点での市場価格を入手することができます。サプライヤにとっては交渉相手はバイヤーではなく競合他社だからです。これがオークション実施後によくあるバイヤーの感想の「思った以上に下がってびっくりした」ということにつながるのです。

ここまで書いてみると上記の2点とも「オークション」だからコスト削減できた、ということでないことが良く理解できるでしょう。
「参加者を増やし競争環境をつくる」のも「適正な落とし所を評価する」のも当たり前なバイヤーとしての当たり前な責務なのです。つまり「電子」だろうが、そうでなかろうが、当たり前のことを当たり前にやっていれば「コスト削減効」
はほぼ同等なのです。
本当に交渉術を持ったバイヤーが制限なく時間をかけられるのであれば「人」による交渉効果の方が高いかもしれません。

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野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

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