バラック・オバマの就任演説と組織論

2013.01.24

経営・マネジメント

バラック・オバマの就任演説と組織論

石塚 しのぶ
ダイナ・サーチ、インク 代表

アメリカ国民を結ぶのは、肌の色でも、信仰でも、名前の由来でもない。アメリカは、「価値観」のもとに建てられた国。オバマ就任演説を聴いて感じた、「今、日本に求められていること」。

バラック・オバマの演説は素晴らしい。情熱的であり、何より自然体で、聴衆の心を掴むのにかけてはまったく達人だ。

私は日本人として長年アメリカに住んでいる。仕事柄、日本とアメリカという二つの国を行き来しつつ生活しているおかげで、どちらの国を見るにつけても、一歩引いて、まるで外国人のような感覚で見る癖がついている。1月21日(月)の朝も、首都ワシントンDCで行われた就任式の演説を聴いていて、アメリカという国の本質を垣間見るような気持ちがしてはっとさせられた。

それは演説の冒頭に来る。オバマが、「アメリカ国民を団結させるものは」と語る箇所だ。

オバマは、まず、「アメリカ国民を団結させるものは、肌の色でも、信仰でも、名前の由来でもない」と言う。ご存知のように、アメリカという国は、「人種のるつぼ」や「サラダボウル」という言葉に象徴されるように、様々な人種や宗教、民族が共存している。日本のような国と違って、これらの要素がアメリカ国民を定義するものではないということである。

そして、オバマは、アメリカ国民を団結させるものは、むしろ、ある「理念」に対する忠誠だという。独立を巡ってこの国がイギリスと戦った時に、その宣言の中に明記された「理念」である。

その理念とは、

「すべての人間は生まれながらにして平等であり、生命、自由、そして幸福の追求は、創造主により授けられた不可侵の権利である」というものだ。

建国の際に、平等という基本原則のもとに、生きる権利自由である権利幸福を追求する権利ということを共通の価値観として打ち立てたこと、それが、200年以上がたった今でも、この国民の本質として根強く生き続けているように思う。

独立戦争が戦われた時、アメリカというところは既に、様々な人種や宗教が混在するところだった。13の植民地(今日でいえば「州」)は、性格もイデオロギーもまるでばらばらの異国のようだった。イギリスへの対応を話し合う議会が結成された時にも、各植民地の代表を一定の期間中に、同じ場所に集めるのは困難を極めた。後に大統領になったワシントンが率いた「軍隊」も寄せ集めのもので、任期が終わると皆そそくさと植民地に帰ってしまったという。戦争を続行するために、ワシントン自ら兵士たちにもう少し我慢してもらうよう懇願しなければならなかったらしい。

そもそも、独立宣言までは、「アメリカ」というアイデンティティは存在しなかったのだ。独立後設立された政府も、発足の張本人たちが「2年ももたないかもしれない」と危ぶむほど不安定なものであったことが記録に残っている。だから「国」として人々の心を束ねるためには、「中核」となる価値観が必要だった。

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石塚 しのぶ

ダイナ・サーチ、インク 代表

南カリフォルニア大学修士課程卒業。米国企業でNASAプロジェクトなどに関わり経験を積んだ後、82年にダイナ・サーチ、インクを設立。以来、ロサンゼルスを拠点に、日米間ビジネスのコンサルティング業に従事している。著書に「未来企業は共に夢を見る~コア・バリュー経営~」(2013年3月発売)、「ザッポスの奇跡 改訂版 - アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略」、「顧客の時代がやってきた!売れる仕組みに革命が起きる」などがある。

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