変化し続けるドメイン:激動ドラッグストア

2007.11.14

経営・マネジメント

変化し続けるドメイン:激動ドラッグストア

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

11月14日の日経MJに「激動ドラッグストア」という記事がトップに掲載されていた。2009年に予定されている改正薬事法の施行によって、業界はビジネスモデルの再構築を迫られているという。もう一方で、「ビジネスドメインの変化」という視点で見るとさらに興味深いことがわかってくる。

同記事によると、改正薬事法によって業界最大手のマツモトキヨシが大きな影響を受けるだろうと予想している。法改正のポイントは、これまで大衆薬の販売を行うにも薬剤師の常駐が必要であったところが、規制が大幅に緩和されるという。その結果、スーパーなどでも大衆薬が扱えるようになるため、異業種を含めた競合環境の激化を意味する。

マツモトキヨシに代表される、今まで隆盛を誇ってきた大規模ドラッグストアは、元々は更にその前の薬事法改正によって薬剤師によるOTC(Over The Counter:対面販売)から来店客のセルフスタイルでの購入が認可されたことによる。その結果、小規模な薬局・薬店の店舗スタイルから解放され、売り場が大規模化し、日用品・食料品を併売することによって、スーパーの競合にもなりえる存在になったのである。

この変化を「ドメイン」という観点から考えてみよう。
「ドメイン(domain)」とは、直訳すれば「領地・領土」のこと。ビジネスにおいては、企業が戦う「土俵」を現わす。自らが有利に戦える土俵を選ぶことが戦略の基本だ。また、何らかの時流の変化を捉え、有利な土俵を構築することも重要だ。
マツモトキヨシをはじめとするドラッグストア業界のプレイヤーは、前の法改正の機会に「ドラッグストア」という独自の土俵を構築し成長したのだ。日経MJによると、「平均粗利率35%という大衆薬で稼いだ利益を原資に、食品や日用品の特売を仕掛けるのがこれまでの“成長の方程式”だった」とのことである。

ドメインという観点からすれば、法改正によって可能となった店舗形態を活かし、「薬局・薬店」というドメインを「ドラッグストア」というドメインに拡張した。そのドメインは実質的には日用品・食品の販売という側面ではスーパーと競合する。しかし、大衆薬販売では、顧客がセルフで薬を手にするものの、店舗には最低一名の薬剤師の常駐が義務付けられるという制約条件によって、スーパーの参入を阻むという絶妙なバランスの上に成り立っていたのだ。

その絶妙のバランスが、更なる法改正によって崩れた。一層の規制緩和がドラッグストアのドメインの垣根を壊し、スーパーと全く同じドメインでの戦いを余儀なくさせた。
このように、ドメインは自ら構築し、チャンスを広げることができる反面、好むと好まざるに関わらず、法改正をはじめとした外部環境の変化によってドメインが強制変更させられてしまう場合もあるのだ。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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