ヴィレッジヴァンガードの変貌を探る

2012.06.01

営業・マーケティング

ヴィレッジヴァンガードの変貌を探る

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 5月30日付日経MJに「ヴィレッジヴァンガード」の中高年向け新業態店が取り上げられていた。その意図はどこにあるのだろうか。

 新業態店は「ホームカミング」。1号店を福岡県のイオンモール内に出店し、2017年5月末までに約50店の出店を見込むという。
 注目すべきはターゲットである。記事タイトルに「中高年向けの書籍・雑貨店」とある。取り扱う書籍は料理や落語などに注力し、雑貨は杖、老眼鏡、釣り具、ガーデニング用品などをそろえるという。

 ここのところ、ブランドや各業態の「アンチエイジング」を当Blogで取り上げてきた。70歳をボーダーとして顧客の年齢層が上がりすぎると売上が低下する。また、ブランド価値が低下することを回避するため、百貨店などを中心に各社・各業態が顧客の若返りを図っているのである。
 一方でボーダー70歳以前の中高年の消費は活発であるため、ヴィレッジヴァンガードは新業態店「ホームカミング」でそこを狙いにいっていると思われる。但し、従来のヴィレッジヴァンガードとの取扱品目がまったく異なるため、ブランド価値の棄損もつながらないように、別ブランドで展開しているのがポイントだ。
一方、さらに別ブランドでの展開も記事では紹介している。10~20歳代の女性向け新店舗「エキサイティングガールズストア」の出店を始めた。1号店は広島、2号店は金沢に出店した。

 上記のように、ヴィレッジヴァンガードは性・年齢別セグメントでブランド分割を始めたことがわかる。ヴィレッジヴァンガードといえば、店内にゴチャゴチャと種々雑多な雑貨や様々なマイナーな書籍までを取り扱った、「行ってみなければナニがあるかわからない」という、「知的ドン・キホーテ」的な店内が魅力であった。そして、ターゲットは性・年齢というより、そうした雑多さを楽しむイノベーター、またはアーリーアダプター層であったはずだ。
 変化は出店の幅を広げたときから起こっていた。ショッピングセンターに出展を始め、ターゲットを先端的な顧客層から一般層に拡大し、取扱品目もやたらと尖ったモノが陰を潜めたように思われる。つまり、「ブランドの希釈」が起こっているのである。

 拡大路線で、「面白いモノがとにかく好き」というような先端的な顧客層を集客するだけでは顧客ボリュームが足りなくなった。そこで、心理的・嗜好的セグメントから、わかりやすい性・年齢セグメントに切り替え、ポジショニングを明確にするためブランド分割を行ったというのが真相だろう。但し、「ホームカミング」も「エキサイティングガールズストア」も地方発で手探りの展開であるように思われる。

 ブランド拡張は、「命がけのジャンプ」とも言われる。「ヴィレッジヴァンガード」のブランドの核が希釈化しはじめ、また、派生ブランドを投入したことによって、ブランドが拡張していることがわかる。うまい着地点を探しての手探りはしばらく続くのではないかと思われる。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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