「綾鷹」と「一(はじめ)茶織」のすみわけ

2007.11.08

営業・マーケティング

「綾鷹」と「一(はじめ)茶織」のすみわけ

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

日本コカ・コーラが今年10月に発売した、 ペットボトル茶の新商品、 「綾鷹」 をあなたはもう飲んでみましたか?

「綾鷹」は、宇治の老舗茶舗と組んだ商品。

お茶本来の

「にごり」

を活かしているのが特徴ですね。

確かに、急須で入れたお茶にとても近い味わいだと、
私は感じました。

京都の茶舗とのタイアップという点は、
伊右衛門の二番煎じですが、「味」については、
しっかり差別化できているんじゃないでしょうか。

さて、日本コカ・コーラのペットボトル茶としては、

「一(はじめ)茶織(さおり)」

もあります。

同じお茶カテゴリーなので

「カニバリ(共食い)」

しないのかと気になりますね。

もちろん、コカ・コーラとしては、
その点は考慮済み。

以前ご紹介した、同社の新しい分析手法、

「CBL」(Consumer Beverage Landscape)

に基づき、それぞれ消費者の異なる

「ニードステート」(欲求状態)

に対応し、うまくすみわけられるように
設計されているのです。
(日経情報ストラテジー、December 2007)

「CBL」は、数千人規模の消費者を
対象とするインターネット調査でデータを収集します。

具体的には、対象者が1週間に口にしたすべての飲料の名称や
サイズ、購入・飲用した場所、時間、その時の気分等を把握。

そしてこの調査結果の分析に基づいて、

「飲用機会」

を19種類のニードステートに分類するものです。
このニードステートは、具体的には

「食事との相性」
「気分一新」
「栄養補給」
「自分らしさ」

などの名称が与えられています。

「CBL」によれば、綾鷹が対応するのは、

「リラックス系」

のニードステート。

一方、「一(はじめ)茶織」が対応しているのは、

「リフレッシュメント系」

のニードステート。

端的に言えば、

・綾鷹は仕事の合間に飲みたくなるもの
・一(はじめ)は、休日に飲みたいもの

という違いになります。

コカ・コーラでは、綾鷹の発売に当たって、
30-50代の男性が働く職場に100万本以上の
無料サンプルを送るというキャンペーンを
行いました。

これは言うまでもなく、

「リラックス系」

のニードステートを意識したものですよね。

なお、同社の旧ダイエットコークを改称した、

「ノーカロリーコカコーラ」

と、今年7月発売の

「コカ・コーラ ゼロ」

も商品特性としてはほぼ同じですが、
やはり対応するニードステートが異なるように、
CBLに基づいて開発されています。

消費者の性別、年齢等の

「デモグラフィック属性」

だけでなく、飲むときの気分のような

「心理的(サイコグラフィック)属性」

を加えたセグメンテーション、ターゲティングを
行えば、商品開発の精度を高めることができると
いうわけです。

(参考記事)
*コカ・コーラの「CBL」:消費者調査の新手法
http://www.mindreading.jp/blog/archives/200703/2007-03-27T0941.html

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松尾 順

有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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