企業戦略と調達・購買戦略(その1)

2012.03.07

経営・マネジメント

企業戦略と調達・購買戦略(その1)

野町 直弘
株式会社クニエ プリンシパル

企業戦略と調達・購買戦略は同期して語られることはあまり多くありません。 しかし企業の中期経営計画などの経営計画では人件費の削減とコスト削減は必ずと言っていいほど施策として取り上げられます。

一方で調達部門出身の社長が未だに決して多くないという事実や近年の調達改革を進める企業のプロジェクトリーダーは少なからず他部門から来られた方である、ということから調達部門の社内的な地位が高くないことは否定できません。
経営者から見ると調達・購買部門は便利なコスト削減請負人程度の位置づけなのかもしれません。

アジルアソシエイツが毎年実施している調達購買部門長調査によると、経営者から特に最近高まっている調達購買部門への期待としてトップに上げられているのは『コスト削減』です。一方で注目すべきなのは第二位に『CSR、コンプライアンス、内部統制の確保』が上げられていることです。
従来であれば調達購買部門の果たすべき基本機能はQCD(品質、コスト、納期)
と言われていましたが、QとDは上位に入っていません。つまり、QとDはあたり前、その上で、CSRの確保やサプライヤリスクマネジメント、さらなるコスト削減などに対する期待が高まっているということです。

このように調達・購買の機能そのものや戦略は企業戦略や経営者の期待、時代背景等によって、もっとダイナミックに変化する(させる)べきものなのです。一部の企業では調達・購買戦略がより重要な機能戦略として位置づけられてきています。

その代表的な事例が米アップル社でしょう。アップル社は昨年の2月に取引先監査報告書を公開し、自社の取引先37拠点でCSR違反のような規範違反があることを発表しています。しかし今年の1月には一部メディアにアップルのサプライチェーンである中国の部品サプライヤー1社における過酷な労働環境が報じられた取り上げられました。
90年代に米N社が中国のサプライヤで違法な児童労働をさせていた、ということで批判が高まり大規模な不買運動につながりました。このような社会環境を踏まえ、特に欧米企業では自社のみならず、自社のサプライチェーン全体でのレピュテーションリスクの管理に気を配るようになっています。アップル社はこのような経営的視点から巨額な費用を投じてでもこのような監査を実施しているのです。

また今年の1月には主要取引先リストを公開しています。このリストに載った載らないで日本企業の株価が上下したという位に社会的な影響をも与えています。米アップル社が何故このようなリストを公開したのか、その目的は定かではありません。しかし、背景には優良なサプライヤの囲い込みの意図があると考えられます。特に近年従来の枠を超えたコスト競争がグローバル規模で激化しています。こういう環境下では「いかにコスト競争力のある優良なサプライヤと両想いになるか」ということが重要になります。これからは買い手が売り手を選ぶのではなく、売り手が買い手を選ぶ時代になっていきます。米アップル社のサプライヤリストの公開にはこのような意味があると考えられます。

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野町 直弘

株式会社クニエ プリンシパル

NTTデータグループのコンサルティング会社である株式会社クニエの調達購買改革コンサルタント。 調達・購買分野に特化したコンサルティングを提供している株式会社アジルアソシエイツの元代表。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルがサービス提供を行います。

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