アジアを一つとしてみる タイの大学訪問記 その2

2012.03.06

経営・マネジメント

アジアを一つとしてみる タイの大学訪問記 その2

林 衛
株式会社アイ・ティ・イノベーション 代表取締役

日本と中国がひとつのチームを組んでアジアで共通の仕事に取組むということはあまりないのではないか。我々の高いノウハウと中国の基盤の融合はこれからのひとつのモデルに成り得る。ただし、日本が素晴らしい先達であるという条件を維持している必要があることを敢えて付け加えておく。

さて、タイの大学訪問で分かったことは、
・実学の分野では、予想よりも、はるかに積極的に国際交流を行っているということ。それを実現するために各大学では、海外に留学経験のある人材、あるいは、外国からできる人材を招いていること。
・英語圏、欧米系の教育システムには関心が強いが、中国との文化的活動をどのように実現するかは今後課題であること。
・日本人講師は、数も少なく、影響力は、これから、という感じであること。
・大学の経営方針、組織運営、教授陣は、しっかりしており、大学ごとに特徴があること。
日本の経済支援により、タイ国内に多くの製造業が最初に、続いて流通、サービス業が進出し成功を収めているが、タイの教育の分野に貢献している日本人は、まだ限定的であると、私は感じている。また、中国の経済的な発展と呼応して、中国の大学の世界での存在は、強くなってきている。

このまま、多くの中国の大学が、積極的に海外の学生を自国に受け入れ、文化的交流・教育的な交流をはかることができれば、将来、アジアと中国の良好な相互関係を築くことが可能になると思われる。今回の中国、日本の混成訪問チームが、タイの大学に大きなインパクトを与えたことはいうまでもない。私たちが一緒に作ったアイデアが、タイで受け入れられたことは、うれしい。中国、日本の一つのチームとしての成果であると思う。

日本の大学が、基礎学問、研究重視であるのに対して、タイの大学の多くは、実学、実務に相当な力を入れている。特に、語学とITの分野では、インド、中国のレベルに発展するのは遠くない話だろう。中国の大学も実業に力を入れていてタイに似た面がある。日本が、見習わなければならないのは、実学やグローバル化に対する姿勢である。日本でよく見受ける旧態依然とした組織では、時代の要求に応えられないかもしれない。日本の組織は、意思決定とスピードの点では、負けている。また、学生よりむしろ力を入れなければならないのは、大学の講師の国際化と海外交流の実現である。

貴重だったのは、タイの大学で日本語を教えている日本人講師二人と日本で博士号を取得しタイでICT部門の長をしているタイ人講師と出会えたことだ。タイの大学訪問で分かったことは、大学が社会の事情に合った貢献を果たしているということだ。彼らは、聞く耳を持っていた。聞く耳を持つことからことは始まる。副学長や学部長が、自ら意思決定に加わることが良い。

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林 衛

株式会社アイ・ティ・イノベーション 代表取締役

PMの達人として著名。近年はビジネスアナリシスあるいは「人間力」をキーワードにIT業界の変革に取組んでいる。

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