「つぼ八」のパスタ店は誰とどのように戦うのか?

2012.03.02

営業・マーケティング

「つぼ八」のパスタ店は誰とどのように戦うのか?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 居酒屋のつぼ八が業態の多角化のため、3月31日に横浜伊勢佐木町にパスタ店を開業するという。(3月2日付日経MJ)。5分以内に調理をする。中心価格帯は500~780円。ターゲットは「時間を気にする男性客」だという。だとすると、ある強大な競合の存在が浮かび上がってくるのだが、つぼ八はどのように戦えばよいのだろうか?

 強大な競合。それは、「マクドナルド」だ。
 マクドナルドはもはや、自らのドメインを「ハンバーガーレストラン」とはしていない。「1,000円以下のカジュアル外食」として、競合はモスバーガーやロッテリアに留まらず、気軽な外食店は全て競合と見なしている。そのため、業績好調の中、年間数百店に及ぶ廃店を進め、一方でオシャレなカフェ風の雰囲気を持った新型店へのリニューアルをしている。凄まじいスクラップ&ビルドを進めているのである。

 それに対して、つぼ八のパスタ店、「ネオジパング」はどのように戦っていけばよいのだろうか。

・製品(Product):「店内で製麺をしたり、ソースを手作りしたりする」とある。その「手作り感」を大きな武器とするのであろう。
・価格(Price):サラリーマンの昼食事情で考えれば、予算は500円に抑えたいという人が多い。どんなに頑張っても1,000円オーバーは無理だ。その点、上記の店内製麺の手作りパスタが500円~780円だとすればウレシイ価格である。支持は集められるだろう。
・立地(Place):第1号店は横浜の「関内イセザキモール」。2号店は「経堂農大通り」と決まっており、3号店までは直営で以降はFC化するという。あえて都内中心地を避けているのはまだ実験段階だと推測できる。3号店以降の立地に注目だ。
・広告販促(Promotion):記事に記載はない。

 上記のマーケティングの4Pの要素で考えれば、Productの手作り感と、それが手軽に味わえる価格設定が光るがそれ以外に大きな特徴はない。では、何を「売り」にすればいいのか。

 サービスマネジメントの観点からいえば、4P以外の差別化要因は3つある。要員(Personnel)、手順(Procedure)、物的証拠(Physical evidence)である。「コトラーのマーケティング・コンセプト(東洋経済)」でも上記の3つのPをレストランの例で説明している。「レストランの業績は、店のスタッフ、食事を提供するプロセス(セルフサービス形式、ファストフード、テーブルサービス付きなど)、店の外観といった物理的特性に左右される」とある。

 日経MJの記事には横浜1号店のイメージパースが掲載されている。店内面積約77平米で客席数は31ということであるが、カウンターにスツールが並んだ、「長崎ちゃんぽんリンガーハット」の店内に似ている。ぱっと見で「ファスト」な感じであり、カフェスタイルのマクドナルドの新型店に対する物的証拠(Physical evidence)に対する優位性が高いとは思えない。但し、約1,300万円を投じているという店内製麺機で製麺をしているところを見せ、「作りたて感」を演出することは可能かもしれない。そして、残りは要員(Personnel)、手順(Procedure)の勝負となる。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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