キングジムはなぜ、「自習室」を経営するのか?

2011.10.04

営業・マーケティング

キングジムはなぜ、「自習室」を経営するのか?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 「パイプ式ファイル」を1954年に開発し、登録商標を取得してファイルのシェア最大手となったのは、誰しも知るキングジム。同社はビジネスパーソン向けの会員制自習室「アカデミーラウンジ」を池袋で運営し、10月3日に水道橋に2号店をオープンさせている。それはどのような背景からなのか、考察してみよう。

 「アカデミーラウンジ」の利用料金は、例えば「平日夜プラン」では 平日) 18:00~23:00で月額 7,800円(税抜き)と格安だ。10月3日付日経MJの記事によれば、2014年までに10店舗に拡大し、同事業の売上目標を2億円に置いているという。連結決算で約300億弱の売上を持つ同社としては大きなものではない。だが、多店舗展開を進める意図は売上だけではない。そこに集う人々のインサイト、吸い上げる「顧客の声」は新たな製品開発に活用できるという好循環も期待できるのである。

 「何でも時代のせいにしてれば、そりゃ楽だ」。
 炭販売の老舗に生まれ、慶応義塾卒業の翌年に新宿に書店を開業。矢継ぎ早に多店舗展開し、日本の大手書店、紀伊国屋書店に育てた田辺茂一(たなべ・もいち)の言葉だ。(「心に響く名経営者の言葉」ビジネス哲学研究会・編・PHP)1980年にラジオのインタビューで「炭屋の片隅ではじめた本屋が日本一になるような時代はもう来ないでしょうね」と問われたコメントだという。
 「時代のせい」にしないためには、何が問題で、どこにチャンスがあるのかを明確にしなくてはならない。キングジムは事務機という「物売り」から自習室という「サービス業」へと業態を拡大した。そして、そこからさらにヒット商品のタネを見つけ出そうという意図が浮かぶ。その姿勢から学ぶところは大きい。

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金森 努

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コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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