ある購買課長の挑戦(前篇)

2011.10.03

経営・マネジメント

ある購買課長の挑戦(前篇)

野町 直弘
調達購買コンサルタント

やや物語調で「とある購買課長」のサプライヤマネジメントへの挑戦について全3回シリーズで語りたいと思います。肩の力を抜いてお付き合いくだされば幸いです。

「私はこのプロジェクトに参加することで合併後のトラブルの連続、大量解雇、責任の押し付け合い、などのどん底から這い上がれました。最初に『このプロジェクトXに参加してみませんか』とお声掛けいただいた藤元課長には感謝の気持ちでいっぱいです。。・・本当に有難うございました。」

ある電子部品製造企業のA専務が涙をこらえながら話をなさった。
一瞬静寂が訪れたがその後会場からは割れんばかりの拍手が響き渡った。

ある冬のことでした。関西のある企業さんより招待され、私はプロジェクトXの発表会に参加しました。
このプロジェクトXは5年前からスタートした現場改革のプロジェクトです。
発表会には関係会社も含む30社程度の企業から数百人が参加する年に一度の盛大な成果発表会でだったのです。
その規模感も初めて参加した私を容易に驚かせることにつながりました。

A専務の会社は中堅電子部品製造業であり、約1.5年前にある中堅企業とほぼ対等な資本比率で合併され、A専務はとある事業とその事業部の主力工場の統合に責任を持つ立場でした。

A専務の企業では統合後、統合会社間の文化の違いや生産システム、生産方式の違いなどから従業員のモチベーションが低下し始めたことから負の連鎖にはまりました。製品品質はトラブルの連続、品質だけでなく、生産システムのトラブルによって受注していないものを生産し余剰在庫が工場内に山のように積まれている。営業や客先からは納期確認の矢のような催促があり、工場側もその対応に毎日追われるばかり。

また安定生産稼働が依然として確立していないにも関わらず、期間従業員やパート社員の大量解雇をしなければ企業収益の確保ができず、涙を流しながら首を切らざるを得ない、そんな毎日でした。
当然のことながら主要得意先からも毎日のように苦情があり、A専務自身も謝罪に行く毎日でした。

そんなある日A専務が藤元課長の会社を訪れたときに、A専務の話を聞き藤元課長はこう言ったのです。

「A専務、弊社のプロジェクトXに参加しませんか?私が今までコンサルタントから伝授された改革ノウハウを使って、御社のお役にたてるように現場に入ります。弊社のプロジェクトXに参加した取引先さんはいずれも大きな成果を上げています。一緒に改革を進めましょう。明日から。」

A専務は唐突なその言葉に驚いた。
何故なら、当然のことながらどのお得意先に行ってもまず言われるのは苦情と嫌みだったからだ。
藤元課長が口にしたのは、『一緒に改革を進めましょう』だった。
『改革を進めてください』とは良く言われる。
しかし、『一緒に』という言葉はどの企業からも言われたことがなかった。
A専務が藁をも掴む気持ちでこのプロジェクトXを社内でスタートさせたのは言うまでもなかった。

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野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

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