「戦略の2つの本質は“違いを作って”、“つなげる”こと」 「部分を見ると非合理だが全体としては合理的なものが優れたストーリー」 「リーダーの条件は“話がおもしろいこと”」……。
こうした個別の項目にはそれぞれ背景があり、他社との違いを生んでいるはず。しかし、個別の項目を見ても「ストーリー」は見えてきません。各項目がそれぞれどうつながって利益になっていくのかを示すのが「ストーリー」なのです。
また、SWOT分析で「強み」「弱み」「機会」「脅威」を考えれば、自社の強みが見えてくるだろうといわれますが、本当にそうなのだろうかと楠木氏は問います。たとえば、「会社が小さい」というのは強みなのか弱みなのか、3月に起きた震災は自社にとって機会なのか脅威なのか。そうしたことは、自社にストーリーがあり戦略があって初めて決まるものなのです。
楠木氏は、確かな戦略ストーリーの作り方として、「起承転結+一貫性の5C」を示しました。
・まず「起承転結の“結”」――競争優位、利益創出の最終的な論理
戦略ストーリーは結末から考えます。ここに来るのは、利益を創出するための最終的な論理。利益を伸ばすには売上をアップするか、コストを下げるしかないので、ここではそのどちらを進めるのかを決めておきます。
ちなみに、売上は、顧客が何かに価値を感じて発生するものなので、「売上アップの論理」ではなく、顧客の「支払おうと思う気持ち」をいかにして上げるかの論理を考えるべきだということ。
・次に「起承転結の“起”」――コンセプト、本質的な顧客価値の定義
ゴールが決まったら、起点となるコンセプトを作ります。
たとえばリクルートは人間の消費が発生する範囲の広さに着目して、より消費を喚起する「狭域情報」を提供するというコンセプト。また、スターバックスは、コーヒーを売るのではなく「過ごす場所を売る」というコンセプト。
優れたコンセプトというのは、見たままではなく、顧客にとっての本質的な価値の定義。だから、それを見つけ定めるには、人間の本性を直視することが必要なのです。
・次に「起承転結の“承”」――競合他社との違い
本当はみんなが気づいているのに、見ないふりをしてきている点をみつけて「他社と違った良いこと」に結びつけていきます。
・次に「起承転結の“転”」――クリティカル・コア、中核的な構成要素
戦略は、ストーリー全体が「合理的か非合理的か」と、部分が「合理的か非合理的か」のバランスで考えます。
「各部分:非合理、ストーリー全体:非合理」だと、単なる愚か者。ここを目指す人はいません。
楠木氏は、「ストーリー全体:合理的、各部分:合理的」の組み合わせを指して「普通の賢者」だといいます。これを目指そうとする人もいるが、他社に真似をされる余地がおおいに残るパターンです。
次のページ・最後に「一貫性」――ストーリーの評価基準
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2009.02.10
2015.01.26
安田 英久
株式会社インプレスビジネスメディア Web担当者Forum編集長
企業のウェブサイト活用やウェブマーケティングに関するメディア「Web担当者Forum」(http://web-tan.forum.impressrd.jp/)を運営しています。