人事部は「窓際族」の再生産をやめよ。

2011.08.18

組織・人材

人事部は「窓際族」の再生産をやめよ。

川口 雅裕
NPO法人・老いの工学研究所 理事長

人事部は、どのように変わるべきか。

「窓際族」とは、重要な役割や使命を与えられなくなり、暇を持て余して(窓際で外を眺めて時間を過ごして)いる役職者やベテラン社員のことを指している。最近、あまりこの言葉を聞かなくなったのは、ひょっとして「窓際族」が増えた結果、多くの会社において大して珍しいことではなくなってしまったからではないだろうか。中高年層の扱いに困っている会社は昔に比べればはるかに多いようであるし、実際に、潜在的失業者を加味すれば失業率は10%を優に超えるといった調査結果も存在する。

かなり前の話だが、加護野忠男・神戸大学教授の講演を拝聴した際、人事部が果たしてきた役割を評価される一方で、「戦後、人事部が犯した最大の罪は、窓際族を大量につくってしまったことだ」と指摘しておられたのを覚えている。欧米にキャッチアップすることを目指して一直線の成長を実現しようとした時代。そのための人材の調達・管理において、人事部の果たした役割は大きかった。が、そのような時代が終わり、企業が社会・経済の速く大きな環境変化に対応しなければならなくなったとき、気がつけば通用する人材は多くなかった、人事部は次世代を見据えた人材育成を怠ってきたのではないか、という指摘である。

窓際族は、どのようにして生まれるのか。様々な研究結果はあると思うが、基本的には、同じ分野において、同じ知識・技術を用いて、同じような安定した環境で働くことができた期間が長すぎたこと、が原因だろう。その結果、知識や技術の陳腐化・劣化が生じ、視野の狭さや視点の低さが放置され、変化が求められる組織において必要性の低い人材となってしまう。得てしてこのようなテーマは、本人達の資質や努力の問題、あるいは“世代論”にされてしまうが、それは違うし解決にもならない。刺激も気づきも学びもない環境に、長期間置き続けた経営であり、人事部に責任ありと捉えるべきだろうと思う。

人事部は、これからも窓際族をつくりつづけるのだろうか。それは、どんな企業の人事部だって、人件費の観点からも、組織運営の観点からも避けたいはずである。しかし、そのために何をすべきか、いまだ明確でない。今の窓際族を、どう処遇するかで精一杯に見える。このままいけば、次々に生まれてくる窓際族の処遇にいつまでも悩み続けなければならないのは明らかだろう。窓際族を生んできた人事部の組織人事マネジメントを反省し、改善せねばならない。これは、人事部の急務かつ最優先の課題だと思う。

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川口 雅裕

NPO法人・老いの工学研究所 理事長

「高齢社会、高齢期のライフスタイル」と「組織人事関連(組織開発・人材育成・人事マネジメント・働き方改革など」)をテーマとした講演を行っています。

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