外食店の店頭はどう変わる?:とんかつチェーンの挑戦!

2011.08.04

営業・マーケティング

外食店の店頭はどう変わる?:とんかつチェーンの挑戦!

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 低価格のとんかつ店「坂井精肉店」を展開する「ユナイテッド&コレクティブ」が、相次いで施策を展開し、さらにその狙いを絞り込みはじめた。同社にはどんな風景が見えているのだろうか。

 日経MJに低価格のとんかつ店「坂井精肉店」を今夏中に加工工場を新設し、店舗数を2012年2月までに首都圏で32店、当時の2.5倍に増やすという記事が掲載されたのは、4月27日のこと。とんかつはアークランドサービスが展開する「かつや」などのチェーンもあるが、高コストになりがちで低価格が実現できず、チェーン化しづらかった業態だ。そのため、気軽なランチメニューとしては牛丼などに圧されて存在感が希薄だといえるだろう。
 それに対し、坂井精肉店は、「ソースかつ丼390円」という低価格メニューを実現した。KSF(Key Success Factor=成功のカギ)はセントラルキッチンの導入と、大量購買、テイクアウトが多い住宅地近隣立地出店で、低コスト・高回転を実現している。

 8月3日の日経MJにはさらに新展開の記事が掲載されていた。新たな屋号は「サカヰ精肉店」。住宅地の駅前などで展開するモデル店としての展開だという。従来の「坂井精肉店」でもテイクアウトには前述の通り実施していたが、一度店内に入って購入する必要があった。それを、店外に向けたショーケースによって、通行客が気軽に総菜や弁当を買えるようにしたのだという。

 実は、「サカヰ精肉店」の例だけでなく、昨今、住宅地駅前立地の外食店はこのスタイルを強化している。筆者の地元でも、店外ショーケースを設けた焼き鳥店と鶏唐揚げ店が相次いでオープンした。その狙いは明確だ。つまり、店内で提供する既存メニューを、店内に取り込めない新規顧客に販売しようという「新規顧客×既存商品」の成長戦略である。
 テイクアウト客は店にとってオイシイ。売上=客数×客単価であり、客数は飲食業の場合、客席数とその回転数によって決まる。しかし、テイクアウト客はその席数のカウント外で売上をもたらしてくれるのである。
 「サカヰ精肉店」はさらに一段上の狙いを持っている。「坂井精肉店」では、価格を約600円に抑えたハンバーグの定食を提供していたが、「サカヰ精肉店」ではハンバーグメニューを強化し、和牛と白金豚を使った「金のハンバーグ」をとんかつと並ぶ目玉にするという。価格は何と、200グラムで1,092円。

 しかし、坂井精肉店は低価格で勝負するハズなのに、1,092円のハンバーグとはどういうワケだ?という疑問が湧く。そう考えると、「サカヰ精肉店」はターゲットとポジショニングが異なるのではないかと考えられる。事実、記事には<坂井精肉店の路面店は好調なため、従来のまま営業していく方針。ただ、首都圏の住宅地の駅前などでは、客層を広げる余地があると見込む><子どもに人気のあるハンバーグにも力を入れ、家族連れなど新たな顧客を獲得したい考えだ>とある。つまり、「新規商品×新規顧客」の成長戦略である。
実はこのパターンは、ニーズが明確になっていない顧客を相手に、従来と異なる商品に手を出すという、最もリスクの高いパターンである。しかしこの場合は、同じセントラルキッチンでの調理による「生産シナジー」と、既存の店舗を使った「販売シナジー」が効いていて、原価低減が図れているのがポイントだ。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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