任天堂の「Wii U」は血みどろの戦いを覚悟したのか?

2011.06.10

営業・マーケティング

任天堂の「Wii U」は血みどろの戦いを覚悟したのか?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 任天堂からWiiの後継機が発表された。「Wii U(ウィー・ユー)」。しかし、発売直後に同社株価が<「斬新さは乏しい」(国内証券会社)として見直し買いを入れる投資家は限られた(日本経済新聞)>ことによって年初来安値を記録することになるなど波乱含みの船出となった。

 6月9日付日本経済新聞に「戦略分析」という記事で、任天堂・岩田聡社長のインタビューが掲載されている。サブタイトルに「高性能で巻き返し」とある。記事中ではYOMIURI ON-LINE同様に、<幅広い顧客層の獲得を目指す>とある一方、<「Wii」は家族が主な顧客層だったが、新型機は高画質な映像などで、熱心なゲームファンを引きつけたい考えだ>ともある。ターゲットが定まっていない様子が非常に気になる。
 気になるのはポジショニングも同様だ。<MS(マイクロソフト)やSEC(ソニー・コンピュータエンターテイメント)のゲーム機に比べ見劣りしていた画像の表示性能も高める>とある。Wiiのポジショニングは、映像のきれいさなどではなく、「家族や仲間とワイワイ楽しめること」だったはずだ。そこにおいて、競合との差別化を行っていたのだ。

 WiiのUSP(Unique Selling Proposition=自社独自の提供価値)は「体感」であり、それを用いて「家族や仲間とワイワイ楽しめる」ということだ。その意味では「Wii U」は後継機として正しい進化を遂げているといえるだろう。しかし、「体感」はもはやUSPとはなり得ていない。昨年11月に発売されたマイクロソフトの「キネクト」。Wiiがリモコンを通じて身体の動きをゲーム機本体に伝えるのに対し、ゲーム機X-BOXにプレイヤーの身振り手振りや音声を検知して操作を可能にする入力端末が「キネクト」だ。<発売してから販売台数1000万台を超えた(6月9日付日本経済新聞)>といい、少なからずWiiの販売シェアにも影響を与えている。つまり、任天堂は「Wii」の性能を高め、「Wii U」に進化させることで、競合とのガチンコ勝負を覚悟したのだといえる。

 もはや任天堂と「Wii U」の前に広がっているのは青い海・「ブルーオーシャン」ではなくなってしまった。競合と血みどろの戦いを繰り広げる「レッドオーシャン」である。
 そこで戦い抜くためには<良質なソフトをより集められるかが、Wii Uの将来を左右しそうだ(日本経済新聞)>とある。しかし、「ソフト」もゲーム機の延長、その一部としての「モノ」にすぎない。前掲「マーケティング近視眼」のセオドア・レビットは「顧客はドリルが欲しいのではない。穴を開けたいのだ」という有名な言葉を述べた。道具である「ドリル」は「モノ」、「ウォンツ」。顧客が充足させたい欲求、「ニーズ」は「穴を開けたい」ということだ。
 「Wii」という製品のキモは「加速度センサー」を組み込んで体感ゲームに仕上げたこと。しかし、消費者は「加速度センサー」という「モノ」の存在を知らないし、それを欲しいとも思っていなかった。任天堂は「従来にないゲームの楽しみ方」を「従来ゲームをしていなかった層」に向けて提案したことで成功したのだ。
 任天堂「Wii U」がレッドーシャンを戦い抜く、もしくはそこから抜けてブルーオーシャンを見つけるためには、高性能なゲーム機のプラットフォームの上で動く良質なソフトで、「誰に」「どのような体験」を提供すればいいのかを、今一度立ち止まって考えてみることが求められる。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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