ミスドの「焼ド」はオイシイか?

2011.05.27

営業・マーケティング

ミスドの「焼ド」はオイシイか?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 ミスタードーナッツが5月25日から新カテゴリーのドーナツとして、油で揚げていない焼きドーナツの発売を開始した。従来と全く異なる製法を導入してまで展開するほど商売としてはミスドにとってオイシイのか。また、そもそもドーナツ屋という商売のうま味はどこにあるのかを考察してみよう。

 しかしながら、世は健康志向が大勢。メタボ検診も2008年から法制化され、男性だったら85センチという比較的フツーのオトナなウエストサイズですら許されない世の中だ。そんな環境は、油で揚げたドーナツにとってアゲインストな風であることは間違いない。「ヘルシーな油で揚げてない焼きドーナツ」は「数を売る戦略」であるミスドにとって欠かせない武器である。
 業界のプレイヤー同士は戦い競い合いながら市場を維持・拡大していく。最近でドーナツがブームとなったのは、米国からクリスピークリームドーナツが上陸し、2006年12月に新宿サザンテラスに1号店が出店した時だ。以後、2007年10月に有楽町イトシアに2号店が出店。2010年からは全国各地に出店を広げはじめた。しかし、常に購入のための長蛇の列を作ってきた同社の勢いもさすがに弱まり、行列は沈静化。それにともない、順番待ちの客に振る舞われる、揚げたてドーナツ丸ごと1個サービスも終了した。
 もともとの逆風下に起こったドーナツブームは風前の灯火。それを再び明るく輝かせるためには新機軸が必要だったのだ。果たして、ミスドの「焼ド」が「ミエル」を同質化したのか。そもそも、元祖が「ミエル」なのかも諸説あるが、ミスドにとって焼きドーナツが「ヘルシーなスイーツ」であるというブームがわき起こったことは見逃すことのできないチャンスだったのである。

 テレビの日曜劇場で大沢たかお、綾瀬はるかが出演する人気ドラマ「JIN-仁-」。幕末に原題の外科医師がタイムスリップしたという設定で、大沢たかお演じる主人公の医師が脚気の薬を兼ねた甘味として考案する「安道名津(あんどうなつ)」。ドラマとコラボレーションして劇中の品を再現した商品が、全国のセブンイレブンで「焼ド」と同じ25日に発売された。ドラマでの「その調理シーンは瞬間最高視聴率26%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録している」(5月25日・毎日新聞デジタル)という。奇しくも同じ発売日となった「焼ド」と「安道名津」が刺激しあって、再びドーナツをオイシイ商売にするかもしれない。

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金森 努

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コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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