対メガマック?ケンタッキーはナゼ「肉食女子」を狙うのか?

2011.05.10

営業・マーケティング

対メガマック?ケンタッキーはナゼ「肉食女子」を狙うのか?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 5月12日、胸肉1枚をまるまる使ったというボリューム満点のチキンサンドを、綾瀬はるかが豪快にかぶりつくCMがオンエアされ、新商品発売もスタートする。その名もケンタッキーフライドチキン「ローストチキンサンド」(←意外とネーミングはフツーだ・・・)。狙うは「肉食女子」だという。その戦略の背景を考察してみよう。

 理由は2つだ。1つは強大なるコストリーダーであるマクドナルドの「全方位戦略」と競って無用な消耗戦を避けるため。全面対決をするのであれば、CMも綾瀬はるかの起用ではなく、男女セットだったり、老若男女を取り混ぜた人物だったりを登場させただろう。実際、チキンメニューの攻勢に際しては、CMには中年男性の鶴瓶を起用しつつ、女子学生との会話のシーンで構成するなど、オールターゲットへの訴求をしている。オールターゲットへの浸透を図るには、CMの投下量も大量にならざるを得ず、コストも膨らむ。
 もう1つの理由は、ターゲットをキッチリ絞ってそのターゲットに確実に販売するためだ。「ローストチキンサンド」をリリースの要素から分解して考えてみると、「胸肉1枚、レタス、スライストマト、グラハム粉と粗挽きのバンズ」となる。セットならこれにポテトとドリンクだ。それらを別々に盛りつければ、「チキンソテーと付け合わせポテト・パン、サラダ、ドリンク付き」という結構普通のランチセット的メニューになることがわかる。つまり、「肉食女子」や「ガッツリ女子」という特殊な女性でなくとも食べきれるのである。ターゲットとしては、ダイエッターなどを除いてしっかりと食べたい女性を幅広く取り込むことを狙っているのだ。

 このメニューとCMでアピールしたいのは、「食べた時の満足感」と「食べることの罪悪感を打ち消すこと」だ。それはとりもなおさず、自社の弱みを払拭することでもある。
 まさに低価格競争の「チキンレース」を繰り広げている牛丼業界。それに引きずられて、外食業界全般のランチ価格がデフレ化しているのに比べてれば、KFCのセットメニューには割高感があるといえよう。そこで、「胸肉まるまる1枚」という明確さで、単品410円、セットで710円という価格の妥当性をアピールしているのである。一方、しっかり食べつつも、ヘルシーでローカロリーであってほしいのはオンナゴコロ。そこで、もともとローカロリーな「チキン」を揚げずに「ロースト」して、さらにレタス・トマトではさんだというところを訴えているのだ。従来の満足感はあるものの、食べちゃった罪悪感に悩むフライドチキンとの違いを明確化しているのである。「食べることの罪悪感」を持たずに「食べた満足感」を得たいというニーズを持っているのが最も多い層が女性であるが故に、そこに集中して「チキンシェア奪還」を効率的に、着実に行おうとしているのだ。

 強大なリーダー企業との直接競合を回避しつつ、割高と思われがちな自社の価格イメージを払拭し、ヘルシー訴求による女性層集客とういう従来の戦略を強化する。そんな狙いがバッチリとあたるのか。同商品の販売期間は6月まで。売れ行きの様子を楽しみにウォッチしてみたい。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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