就活生に「洗えるスーツ」は微笑むのか?コナカの戦略を読む!

2011.04.30

営業・マーケティング

就活生に「洗えるスーツ」は微笑むのか?コナカの戦略を読む!

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 各社から「洗えるスーツ」が発売されはじめたのは2009年頃のこと。商品は毎年進化を繰り返し機能アップをしているが、マーケティング戦略も先鋭化をしてきている。その中で、コナカは過去最も厳しいといえる今年の就職戦線を戦う就活生のハートをガッチリつかむ戦略にでた。

 「一生モノ」といった風情の商品も少なくなかったスーツという商品の価格が急降下し、ついに1万円を切るようになったのもデフレの影響によるところが大きい。2007年、西友が親会社ウォルマートの調達力を活かして7980円のスーツを30~50代向けに投入し好評を得て、翌年に若年層にメーンターゲットを移してラインナップを拡充。ウォルマートの衣料品のPBである「GEORGE(ジョージ)」ブランドで展開し、シルエットや仕立てをブラッシュアップした。
 その後、流通大手各社や百貨店、紳士服専門店も参戦し、アンダー1万円スーツ市場は激戦となったが、昨年異変が起きた。<松屋銀座で9800円スーツがセール初日に完売した2009年から一転、10年はセールから1週間経っても売れ残っているという。代わりに売れているのが高級生地を使った3、4万円台のスーツだ>(2010年5月17日J-CASTニュース)という。背景にあるのは「景気の上向き感」だと同記事は分析。代わって格安なパターンオーダースーツが人気を集めたという。

 格安といってもパターンオーダーは最低3~4万円する。「節約疲れ」と呼ばれる風潮もあったものの、すべての人がそちらに向かうわけではない。
 新たに登場した勢力は、機能性を高めた低価格スーツだ。
 モノの「コスト」は、新規購入する「イニシャル」と、維持するための「ランニング」に分解できる。「背広」の語源はスーツの発祥地でもあるロンドンの仕立屋街「サヴィル・ロウ」にあるという説もあるが、英国紳士の装いを高温多湿な極東の島国でするには無理があるのだ。故に春夏物スーツはランニング費用としてのクリーニング代が馬鹿にならない。そこで登場したのが「洗えるスーツ」。紳士服専門店各社が2010年にこぞって市場に投入した。青山の「アクアウォッシュスーツ」1万9900円~。AOKI「プレミアムウォッシュスーツ」1万8900円~。コナカ「シャワークリーンスーツ」2万9500円~。はるやま「ウォッシャブルスーツ」8900円~。

 昨年開かれた戦端において、価格的に割高な展開となったコナカだが、今年は思い切ったセグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングを明確にした戦略にでた。具体的な商品を先に挙げればわかりやすいだろう。その名も「就活Vスーツ」である。
 広告には就活生と同世代の星、石川遼をキャラクターとして起用。価格は1万8900円。商品の特徴は、洗濯機や洗剤を使わず温水シャワーをかけるだけで汚れを洗い流せ、一晩(6時間)で乾くと明記する速乾性。さらに、アイロン仕上げ不要というメンテナンスフリーさだ。
 機能的には昨年売り出した「シャワークリーンスーツ」とほぼ同等だが、セグメントは「就活生」と「一般ビジネスマン」に分けて、前者を思いきりターゲットとしている。価格で勝負すれば、「はるやま」が最安だ。しかし、ターゲットを明確にすることでポジショニングも明確になる。就職戦線は年々長期化している。しかし、学生の身で複数のスーツを購入するのは厳しい。かといって、面接では好印象を残したい。そこで、「6時間」と明言する速乾性が効いてくる。1着しかないスーツをきれいに洗って、翌日の面接に臨むという就活生の行動を実現できるからだ。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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