「トヨタ自動車創業者の購買係心得帳」

2011.03.31

経営・マネジメント

「トヨタ自動車創業者の購買係心得帳」

野町 直弘
調達購買コンサルタント

以前にも取り上げましたが、数回に渡ってリスクマネジメントに関して日米の先進事例を取り上げてきましたので、敢えてまた取り上げたいと思います。

以前にも取り上げましたが、数回に渡ってリスクマネジメントに関して日米の先進事例を取り上げてきましたので、敢えてまた取り上げたいと思います。

「購買係心得」(一部抜粋)

<第4条>
購買先の選定には特に注意を払うこと。
各方面にアンテナをめぐらし、他に優秀なところがないかどうかを常に研究しておくこと。
1部品に対してはなるべく2ヶ所に注文することを原則とする。
ただし、止むを得ない場合には、部長の許可を得た上で、1ヶ所または3ヶ所とする。
1ヶ所の場合は、出来るだけ早く、他の適切な購買先の選定に努力すること。
3ヶ所以上の場合には、なるべく従来の注文先に迷惑のかからないように特に注意しながら、値段が高く、不良が多いところへの注文を順次減少させていって差し支えない。

<第5条>
他に適切と考えられる部品メーカーがあった場合は、部長と相談の上、試作をさせること。
そして特に製品が優秀であるとか、特に安価である場合はその理由を確かめ、十分な理由が確認できた場合は、従来の2社と並行して注文を出し競争させること。
ただし、無理をさせて、部品製造工場が立ち行かないようにしてしまうことが絶対にないように注意すること。

<第12条>
注文先に出す書簡は会社を代表して出すことになるため、会社の対面を損することのないよう出来るだけ丁寧な文句を使用すること。
部長はこの書類を見て不満な場合は書き直させること。
また電話をかける場合も尊大振りな電話の対応をすることを慎むこと。
そのようなつまらないことで先方の感情を害することは、購買係の拙劣であることを示すこととなるため、部長は常に電話のかけ方が悪い場合は注意すること。

以上14ヶ条が厳守されているか否かを監視する役目は、材料係、検査係及び各部長とする。
もし上記事項に違反する行為ありと認められる場合には、直ちに忠告すべき義務があるものとする。

昭和12年7月15日
常務取締役 豊田喜一郎

豊田喜一郎氏は言うまでもなくトヨタ自動車の創業者であり、2代目の社長です。
「購買係心得帳」は豊田喜一郎氏が昭和12年に常務の時に書かれた14カ条の規範であり、その当時は購買係はたった10名程度の人員だったようです。

何度繰返し読んでも素晴らしくシャープでシンプルです。と共に最大のリスクマネジメントはサプライヤマネジメントそのものである、ということを再認識させられます。

私は「購買係心得」は全ての日本企業の調達リスクマネジメントの原点と言えるのではないかと思っています。

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野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

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