新商品は誰がために?「生茶」と「エステー」の挑戦

2011.03.02

営業・マーケティング

新商品は誰がために?「生茶」と「エステー」の挑戦

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 3月1日付・日本経済新聞消費面「New Face」欄に並んで掲載された2つの商品。そこから、企業のどんなメッセージが読み取れるだろうか。

 1つめの商品はキリンビバレッジの「生茶ザ・スパークリング」。同社のニュースリリースによれば、「新芽のみずみずしさを微発泡で楽しむ」というコンセプト。「みずみずしい味覚と微発泡の爽やかな刺激は、1日を有意義に使うために朝を充実させようという方にぴったりなおいしさ」というターゲティングとポジショニングの設定がなされているようだ。

 そもそも、飲料業界の昨今のトレンドはどうなっているのだろうか。
 業界の概観としては、09年頃から長引いた不景気の影響で、家庭で浄水を使用したり、茶葉を自分で淹れたりという消費者行動が顕著になってミネラルウォーターや茶系飲料が低迷する一方、炭酸飲料は「カロリー・糖質ゼロ」が開発され、健康志向を背景に需要上昇した。また、飲用目的は止渇や空腹、暑さ対応という身体的欲求が減少し、「リフレッシュ」「リラックス」が伸長。それに用いられるコーヒー、炭酸、紅茶という根強い人気の飲料が目立つ状況である。(楽天リサーチ調べ)

 では、「生茶ザ・スパークリング」はどのような狙いで上市されたのだろうか。

 茶系飲料で炭酸といえば、花王の「ヘルシア・スパークリング」が思い出されるが、同商品はどうにも苦い「ヘルシア」や、スポーツ飲料風でもどうしても残るカテキンの苦みを、炭酸とクエン酸の絶妙な配合によって飲みやすくしたトクホ飲料である。狙いは「苦くて飲みにくい味をガマンしてまでトクホを飲みたくない、ダイエットのライトユーザー」である。「お茶+炭酸」という今回の商品とはターゲティングとポジショニングが異なる。
 リリースでは「朝を充実させようという方にぴったりなおいしさ」とあるが、確かに緑茶は朝に飲まれることも多いが、コンビニでは昼食(弁当)との併買が多い。一方、炭酸は主に午後のブレイクにリフレッシュ目的で飲用される。(同・楽天リサーチ調べ)。少々、ターゲティングとポジショニングの整合性に疑問が残る。また、昨今のコンビニを見れば顕著なように、カロリー0の流行は既に盛りを過ぎており、棚で生き残っているのはコーラ系以外「CCレモン」など1~数商品程度。低カロリーももはや「当り前」になっており、差別化要因にはなりにくい。

 ところが、「生茶ザ・スパークリング」に関してTwitterでツイートしたところ、フォロアーの反応が非常に高かった。「緑茶+炭酸」は「どんな味なんだろう?」と、消費者の関心を惹きつける力があるのだ。
 消費者の反応がいい商品は、まず、誰にとってうれしいか。それは、流通チャネルだ。並べた商品をまず、手に取ってもらわなければ始まらない。店頭を活性化したいというコンビニエンスストアの本部、及び店舗オーナーは話題になる商品にはまず、棚を確保する。そして、それが派生商品なら、本体商品の棚を確実に確保しておく。棚の取り合い、生き残り合戦が激しい飲料業界においては戦いの定石ともいうべき「新商品展開」である。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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