見えてきた?牛丼各社の戦略?

2011.02.11

営業・マーケティング

見えてきた?牛丼各社の戦略?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 メディアが伝えるように、大手牛丼3社の1月の各社既存店売上高が発表された。各社とも期間限定の値下げキャンペーンを実施したこともあり、客数を伸ばして2ヶ月連続の増収となったのだ。さらに注目すべきは、値下げ戦争をしながらも、各社が戦略の違いを打ち出しており「出口」を探る動きが見えてきたことである

■吉野家:国内プレミアム化・中国進出強化

 筆者はかねてより「吉野家は牛丼を500円程度の価格にし、各社と一線を画すプレミアム化をせよ」と主張してきた。穀物飼料の米国産牛、その中でも「ショートプレート」という脂肪の入り方が最も牛丼に適した部位を用いることにこだわりを持ち続けてきた吉野家だからこそできることだからだ。昨年11月に発売された「牛鍋丼」は、肉質を変え、しらたき・焼き豆腐などを用いて肉量を加減し、280円という競合価格の設定をしつつ、牛丼の価値を保つ戦略であった。にもかかわらず、1月11日に牛鍋丼ではなく、牛丼を250円という価格にキャンペーン値下げしたのは衝撃的であった。しかし、そこには明確な戦略がある。牛鍋丼で競合に流れた客足は戻ったが、客単価の低下が止らない。そこで、今一度、「吉野家の牛丼」に消費者の目を向けさせようという意図である。通常価格で牛丼は牛鍋丼より100円高であるが、食べ比べれば明確にその価値の違いはわかる。牛丼に顧客を呼び戻す作戦を決行し、時と場合によって「食べ分け」をさせて以後の客単価UPを狙ったのである。
 吉野家はダイナミックな動きもしている。「自社株買い」だ。筆頭株主である伊藤忠商事が保有する全株を買い取ったのである。伊藤忠も中国市場での外食展開には注力している。一方、吉野家は同市場において海外牛丼店舗を約200店展開。2010年代半ばまでに1千店の計画を掲げているのだ。その規模になれば、株主の展開ともバッティングすることも多くなる。それを避け、経営の自由度を上げる目的であると考えられる。そして、競合が中国市場進出を本格化する前に店舗規模で突き放す意図であろう。

■マクロ環境の変化

  牛丼戦争はいつまで続くのか。
マクロ環境を見ると、「コーヒー豆値上げ」というニュースがクローズアップされているが、それ以外にも新興国での需要増大によって大豆価格なども上昇し、製品・メニューへの価格転嫁の検討や予定が進んでいる。さながら価格転嫁・値上げのタイミングとさじ加減で食品・外食各社が明暗を分けた2008年頃の様相の再来である。
牛丼各社もいつまでもチキンレースならぬビーフレースを繰り広げているわけにはいかないのである。それ故、各社各様の戦争終結のシナリオを描き始めているのである。消費者としては価格だけで選ぶのではなく、各社の意図に思いを馳せながら、各々のメニューを楽しんでみたい。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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